キュリー夫人

1話 女性と科学

852字 約2分 2018年11月7日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

 科学は今では女性の方々にとっても必要な大切なものであるということは、もちろん皆さんも知っていられるでしょう。なぜと()えば、ふだんの生活を科学的に合理的に行って、すべての物資を節約することは、つまりは国家に尽す重要な道であることは確かであるからです。

 西洋の大学では、どこへ行っても、男子の学生と肩を並べて教授の講義を熱心に聴き入っている女子の学生を見ない(ところ)(ほとん)どありません。そして大学の研究室のなかにさえも多くの女性が働いています。我が国はいくらかそれとは事情を(こと)にしていますが、それでも今では学位をもっている女性の方方がかなりに見られるようになりました。

 科学の上ですぐれた仕事を成し遂げることは容易ではありません。それでも熱情をこめて励みさえすれば、ある程度には到達することができるのです。しかも科学の歴史を(ひもと)いて見ると、女性でありながらすばらしい仕事をした人たちがそこにいくらも現れて来るのです。私はそのなかからただ一、二の例を採り出して見ましょう。その一人は、ロシヤの数学者として名だかいソーニヤ・コヴァレフスカヤです。彼女は一八五〇年に生まれ、ドイツで数学を勉強して、すばらしい研究をなし遂げ、後にスウェーデンのストックホルム大学の教授に任ぜられて、一八九一年に四十一歳で逝去したのでしたが、女流数学者として他に比類を見ないと称せられているばかりでなく、同時に文学者としても著名であって、その自伝は広く愛読されています。もう一人は、ここでお話ししようとするキュリー夫人で、その名は誰も知らないものもないほどですが、更にキュリー夫人の長女であるジョリオ夫人もまた母に劣らぬ科学上の大きな仕事を成し遂げたので、一層有名ともなっているのです。もちろんこのような成功は特別な場合でもあり、また偶々(たまたま)僥倖(ぎょうこう)のある問題にゆき当ったという点もないわけではないでしょうが、しかし熱心に科学の仕事に携わらなければそこには到達できないのでありますし、(いず)れにしても女性の名を科学の上で高からしめたことは確かであります。

目次に戻る

目次