佐藤春夫詩集

8話 寒蝉鈔 秋の女よ

211字 約1分 2022年4月9日 公開

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泣き濡れて 秋の女よ

わが幻のなかに來(く)る、

泣き濡れた秋の女を

時雨(しぐれ)だとわたしは思ふ、

泣き濡れて 秋の女よ

汝(なれ)は古城の道に去る、

頸(うなぢ)に柳葉(やなぎは)がちりかかる

枯れた蓮(はちす)を見もしない、

泣き濡れて 秋の女よ

汝(なれ)があゆみは一歩一歩、

愛する者から遠ざかる

泣き濡れて泣き濡れて、

泣き濡れて 秋の女よ

わが幻のなかに去る、

泣き濡れた秋の女を

時雨だとわたしは思ふ、

一しきりわたしを泣かせ

またなぐさめて 秋の女よ、

凄まじく枯れた古城の道を

わが心だとわたしは思ふ。

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