トシオの見たもの

5話

919字 約2分 2023年2月18日 公開

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 以下しばらくは、フイルムについて、お祖父さんの説明ばかりが続きます。

 先ずトシオの眼の前へはっきりと現れたのは、ひろびろとした天と地と、海と太陽をうしろにして立った、何とも云い様の無い気高いひとりの人の姿です。

「あれは「原始の国」に立って居られる神様のお姿だ」

 とお祖父さんは云いました。

 トシオはなおも、眼をみはりました。

 フイルムが廻転しました。

 神様は片方の掌に、真白な大きい一つの玉子をのせていられます。

「あれは神様が或日、たったひとつお生みなされた御秘蔵の玉子なのだ」

 お祖父さんの説明はだんだん進んで行きます。

 神様はその玉子を、何気なさそうに、ぽんと落して()られました。するとその()れ目から、赤、白、黒、青の四羽の小鳥が、勢いよく現れました。そしてその小鳥達は、見る見るうちに、四つの方角を差して、めいめいの首を向けて仕舞いました。

 先ず、白い小鳥の首は空の白雲へ、黒い小鳥の首は地の黒土に、また、青い海へは、青い小鳥の首が、赤い小鳥は真赤な太陽へ向いて真直ぐに、どれも、しっかり、うちつけた様に向いて仕舞いました。

「おお、この世の中は、やっぱり私の羽根の様に、真赤な色であったのか」

 と、赤い小鳥は太陽を眺めて、嬉し相にさえずりました。

 すると、海に向いた青い小鳥は、

「いいえ、この世の中は、私の様な青い色です」

 と得意相に云いました。ところがこんど、白雲ばかり仰いで居る白い小鳥が、

「どちらもそれは違います。まったく、この世の中は、白いのです」

 と、さきの二つの小鳥の言葉を打ち消しました。

 と、最後に、黒い土のみ見詰めて居た黒い小鳥が、すべての小鳥の言葉をつきのけて、

「どうして、どうして世の中は私の様に、真っ黒ですぞ」

 と叫びました。

「いいや、赤い」

「なに、黒いのだ」

「白いものとも」

「青いばかりだ」

 と、後ろ向き同志の四羽の小鳥たちの始めた、この争いは、果しもありません。すると、その時まで、じっとこのありさまを、(かたわら)で見て居らしった神様が、

「青いと思う小鳥は青い方へ、赤いという小鳥は赤い方へ、黒いと考える小鳥は黒い方へ、白いと囀る小鳥は白い方へ、めいめい飛んで行ったがよいわ」

 と、(おごそ)かに、お命じになりました。

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