5話 五
読み方を変える
以下しばらくは、フイルムについて、お祖父さんの説明ばかりが続きます。
先ずトシオの眼の前へはっきりと現れたのは、ひろびろとした天と地と、海と太陽をうしろにして立った、何とも云い様の無い気高いひとりの人の姿です。
「あれは「原始の国」に立って居られる神様のお姿だ」
とお祖父さんは云いました。
トシオはなおも、眼をみはりました。
フイルムが廻転しました。
神様は片方の掌に、真白な大きい一つの玉子をのせていられます。
「あれは神様が或日、たったひとつお生みなされた御秘蔵の玉子なのだ」
お祖父さんの説明はだんだん進んで行きます。
神様はその玉子を、何気なさそうに、ぽんと落して破られました。するとその破れ目から、赤、白、黒、青の四羽の小鳥が、勢いよく現れました。そしてその小鳥達は、見る見るうちに、四つの方角を差して、めいめいの首を向けて仕舞いました。
先ず、白い小鳥の首は空の白雲へ、黒い小鳥の首は地の黒土に、また、青い海へは、青い小鳥の首が、赤い小鳥は真赤な太陽へ向いて真直ぐに、どれも、しっかり、うちつけた様に向いて仕舞いました。
「おお、この世の中は、やっぱり私の羽根の様に、真赤な色であったのか」
と、赤い小鳥は太陽を眺めて、嬉し相にさえずりました。
すると、海に向いた青い小鳥は、
「いいえ、この世の中は、私の様な青い色です」
と得意相に云いました。ところがこんど、白雲ばかり仰いで居る白い小鳥が、
「どちらもそれは違います。まったく、この世の中は、白いのです」
と、さきの二つの小鳥の言葉を打ち消しました。
と、最後に、黒い土のみ見詰めて居た黒い小鳥が、すべての小鳥の言葉をつきのけて、
「どうして、どうして世の中は私の様に、真っ黒ですぞ」
と叫びました。
「いいや、赤い」
「なに、黒いのだ」
「白いものとも」
「青いばかりだ」
と、後ろ向き同志の四羽の小鳥たちの始めた、この争いは、果しもありません。すると、その時まで、じっとこのありさまを、傍で見て居らしった神様が、
「青いと思う小鳥は青い方へ、赤いという小鳥は赤い方へ、黒いと考える小鳥は黒い方へ、白いと囀る小鳥は白い方へ、めいめい飛んで行ったがよいわ」
と、厳かに、お命じになりました。