現代の婦人に告ぐ

9話 九 女子の高等教育とその参政権

918字 約2分 2020年9月13日 公開

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 我が国の女子教育は勿論(もちろん)御維新後のことであるが、西洋とても極めて近世のことで、(わず)かに一世紀以前に濫觴(らんしょう)している。それにも拘わらず爾来(じらい)女子教育の発達は駸々(しんしん)として進み、なかんずく米国の如きは最も隆昌の域に達し、女子は男子と等しく如何(いか)なる高等教育をも受け得、その間になんら両性を隔つる屏障(へいしょう)が存在しておらず、男女両性をして、共に天稟(てんぴん)の智能を遺憾なく教育せしむることとなっている。従ってこの自然の勢いはついに米国を(かた)って、その各州に女子参政権を与えしむることとなった。欧州諸国に於ける女子教育もまた大いに進歩したが、その結果として英国には早く女子参政権運動が行われ、長い間困難なる問題として研究されて来たが、この度の大戦を経て英国の国論は、次第に女子の主張に同意し、ついに今日は彼等に参政権を与うることとなった。この頃の文化の潮流から察すると、女子も男子と同様に政治上の地位を要求して()まざるべく、この必至の勢いはついに何時(いつ)かは我が国にも到来するであろうと思う。これはむしろ当然のことである。前にも言う通り、この世は男女相半(あいなか)ばして存在しているので、日本も六千万の民衆というが、この(なか)ばの三千万人は女子でなければならぬ。(しか)るに独り男子のみ政治に参与するの権利を有し、自己のために代弁する代議士を議院に送り得るに対し、三千万人の女子は自己の権利を擁護して代弁する一人の代議士をも議院に送り得ぬということは理に於て矛盾である。もとより物には階段があるので、この階段を経ずして一足飛びには進み兼ねるけれども、将来女子教育と女子の自覚との進歩に伴い、この問題は必ずや我が国にも(もたら)さるべき時期が有るであろうと信ずる。かくの如きは、婦人の当然の権利の主張なのだから、これまでは道理あることだけれども、これと前の自由恋愛というが如きものとは全くその性質を異にしている。我輩はあくまで社会的共同生活を愛するが故に、彼の如き利己的なる乱倫なる自儘(じじん)主義を排する。その様なる議論は勿論婦人界の全部に普及しおる訳でもなく、またかかる不健全なる思想は、(はぐさ)の如く早晩誅鋤(ちゅうじょ)され(おわ)ることと思うけれども、今日一部にかくの如き思想が存在しおるが故に、我輩はあえてこの説をなすものである。

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