62話 古事記 中つ卷 〔氣比の大神〕
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かれ建内の宿禰の命、その太子を率まつりて、御禊一せむとして、淡海また若狹の國を經歴りたまふ時に、高志の前の角鹿二に、假宮を造りてませまつりき。ここに其地にます伊奢沙和氣の大神の命三、夜の夢に見えて、「吾が名を御子の御名に易へまくほし」とのりたまひき。ここに言祷ぎて白さく、「恐し、命のまにまに、易へまつらむ」とまをす。またその神詔りたまはく、「明日の旦濱にいでますべし。易名の幣四獻らむ」とのりたまふ。かれその旦濱にいでます時に、鼻毀れたる入鹿魚、既に一浦に依れり。ここに御子、神に白さしめたまはく、「我に御食の魚給へり」とまをしたまひき。かれまたその御名をたたへて御食津大神とまをす。かれ今に氣比の大神とまをす。またその入鹿魚の鼻の血臭かりき。かれその浦に名づけて血浦といふ。今は都奴賀といふなり。
一 水によつて穢を拂う行事。既出。
二 越前の國の敦賀市。
三 同市氣比神宮の祭神。
四 名をとりかえたしるしの贈り物。