古事記 03 現代語訳 古事記

75話 古事記 中の卷 秋山の下氷壯夫と春山の霞壯夫

914字 約2分 2011年10月11日 公開

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――同じく異類婚姻説話であるが、前の物語に比してずつと日本ふうになつている。海幸山幸物語との類似點に注意。――

 ここに神の(むすめ)、イヅシ孃子という神がありました。多くの神がこのイヅシ孃子を得ようとしましたが得られませんでした。ここに秋山の下氷壯夫(したひおとこ)・春山の霞壯夫(かすみおとこ)という兄弟の神があります。その兄が弟に言いますには、「わたしはイヅシ孃子を得ようと思いますけれども得られません。お前はこの孃子を得られるか」と言いましたから、「たやすいことです」と言いました。そこでその兄の言いますには、「もしお前がこの孃子を得たなら、上下の衣服をゆずり、身の(たけ)ほどに(かめ)に酒を造り、また山河の産物を悉く備えて御馳走をしよう」と言いました。そこでその弟が兄の言つた通りに詳しく母親に申しましたから、その母親が藤の蔓を取つて、一夜のほどに(ころも)(はかま)(くつした)(くつ)まで織り縫い、また弓矢を作つて、衣裝を著せその弓矢を持たせて、その孃子の家に遣りましたら、その衣裝も弓矢も悉く藤の花になりました。そこでその春山の霞壯夫が弓矢(ゆみや)を孃子の厠に懸けましたのを、イヅシ孃子がその花を不思議に思つて、持つて來る時に、その孃子のうしろに立つて、その部屋にはいつて結婚をして、一人の子を生みました。

 そこでその兄に「わたしはイヅシ孃子を得ました」と言う。しかるに兄は弟の結婚したことを憤つて、その賭けた物を償いませんでした。依つてその母に訴えました。母親が言うには、「わたしたちの世の事は、すべて神の仕業に習うものです。それだのにこの世の人の仕業に習つてか、その物を償わない」と言つて、その兄の子を恨んで、イヅシ河の河島の節のある竹を取つて、大きな目の荒い籠を作り、その河の石を取つて、鹽にまぜて竹の葉に包んで、詛言(のろいごと)を言つて、「この竹の葉の青いように、この竹の葉の(しお)れるように、青くなつて萎れよ。またこの鹽の()ちたり()たりするように盈ち乾よ。またこの石の沈むように沈み伏せ」と、このように(のろ)つて、(かまど)の上に置かしめました。それでその兄が八年もの間、(かわ)(しお)()()しました。そこでその兄が、()き悲しんで願いましたから、その(のろい)の物をもとに返しました。そこでその身がもとの通りに安らかになりました。

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