1話 〔国是を一定不動連続とし、大きな規模で外交計画を立てるべきこと〕
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諸君、ご承知の通りに第一議会以来、たびたび国務大臣が議会に向って外交は開国の主義である、あるいは開国進取であるということを、たびたび述べられた様に存じております。外交の方針――方針というよりは、ほとんど国是というものは明治初年以来一定不動のもので、今日並びに将来に於てこの開国の主義、もしくは開国進取というものは、決して変ずるものでないと信じております。それで今日、私はこれに多少付け加えて御話し致そうと思います。明治の国是として現るるところの外交には、どういうことが大切であるかと言えば、維新の大詔にもあるが如く、万国と対立せんとするの大方針よりして、あらゆる国家の組織を変更しなければならぬということが起って、廃藩置県となり、幣制の改革と為り、徴兵令等その他種々の法律の改正、新規な法律を拵え、あるいは地方の議会、地方に自治を与える等、ついに憲法を制定さるるまでに至ったのであります。すべてこの国是、いわゆる開国進取、言い換えれば即ち万国と併立するという主義からして、日本は導かれ、文明に進み、ついに世界に重んぜられ、尊敬さるるということになったのであると存じます。
ここに於てマ一層私は進んで申したいと思うのは、抑々この外交というものは随分困難なるものである。決して一国で以て左右することの出来ないものである。今日の外交というものは、よほど以前とは変化しているのである。諸君、ご承知の通りに、昔の外交というものは、ある一国と一国と、もしくは一国と数国、誠に区域の範囲が狭かったのであります。然るに今日に至っては、運輸交通の便が非常に発達し、世界の利害の関係がよほど密著して来たのである。それ故にこの外交の有様というものはよほど変化して来た。
ご承知の通りに、昨年起ったところの英国と「ベネズエラ」との問題について見るに、英国は世界無比の大国で、世界に日の歿すること無き広大なる植民地を持っているという大国と、南亜米利加の「ベネズエラ」という小さな共和国との間に、境界の争議が起った。而かもその争点は全く沼池である。無人の地であるというが如き処に境界争いが起ったのである。諸君、御考え下され。これはなんでもない話、英国の力、英国の強を以て、弱小の「ベネズエラ」に及ぶ。なんでもない話であるが、なかなかそうは往かぬ。直ちに北米合衆国よりこれに向って干渉が起って来た。そこで英国と「ベネズエラ」の問題に非ずして、南北亜米利加と英国の問題になって来たのであります。それに干渉する言葉にどういう言葉を用いたかというと、ご承知の通りに、随分古くから成立っているところの「モンロー」主義、南北亜米利加に欧羅巴の勢力を拒絶するという一つの主義を持込んだのである。ここに於て南北亜米利加と英国の問題に非ずして、世界の問題になったのである。如何となれば欧羅巴の勢力を入れぬという如きことであれば、直ちに重大の問題に変じて来るからである。マ一つはこれも英国である。昨年英国と「トランスバール」の間に争いが起った。これはなんでもない一つの旅行者、あるいは一つの会社に従事する人が「トランスバール」に於て革命を企てたのである。その問題はなんでもない、一つの阿弗利加の一小共和国、ほとんど英国の一保護国の如き国に於て起った事柄であるに拘わらず、直ちに日耳曼との間に面倒が起った。既に日耳曼と英国と干戈を交えんというまでに進んだ。而して日耳曼と英国との争いは、単に英国と日耳曼の関係に非ずして、日耳曼の三国同盟その他に及ぶというので、やはり世界的の問題になって来た。
それで段々この外交の範囲が広くなって、随分小さな事も世界に関係するということである。既に明治二十七年から二十八年に渉る日清の戦は、支那と日本の関係である。少しも他に関係がないことであった。しかしながらこれもついに二十八年に至って欧羅巴の最も勢力ある露独仏三国の干渉ということが起って来て、ついに世界の問題になった。それから近来では極東問題などというものが、今まさに端を日清戦争から惹起している有様で、なかなかこの外交の範囲が広くなって来た。利害の関係が直ちに極細微の事も世界に及ぶというが如き有様である。是に於て私は一言述べたいのは、この外交というものが、第一規模が大きくなくてはならぬ、計画の規模が広大でなければならぬ、すべての外交計画は直ちに全世界に及ぶ、規模広大なりということ、及び外交の方針、否、国是というものは一定不動連続ということが必要である。