『春と修羅』補遺

3話 厨川停車場

326字 約1分 2000年10月4日 公開

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(もうすっかり夕方ですね。)

けむりはビール瓶のかけらなのに、

それらは苹果酒(サイダー)でいっぱいだ。

(ぢゃ、さよなら。)

砂利は北上山地製、

(あ、僕、車の中へマント忘れた。

すっかりはなしこんでゐて。)

(あれは有名な社会主義者だよ。

 何回か東京で引っぱられた。)

髪はきれいに分け、

まだはたち前なのに、

三十にも見えるあの老けやうとネクタイの鼠縞。

(えゝと、済みませんがね、

 ぼろぼろの繻子のマント、

 あの汽車へ忘れたんですが。)

(何ばん目の車です。)………

 (二等の前の車だけぁな。)

Larix, Larix, Larix,

青い短い針を噴き、

夕陽はいまは空いっぱいのビール、

くわくこうは あっちでもこっちでも、

ぼろぼろになり 紐になって啼いてゐる。

(一九二二ヽ六ヽ二ヽ)

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