3話 厨川停車場
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(もうすっかり夕方ですね。)
けむりはビール瓶のかけらなのに、
それらは苹果酒でいっぱいだ。
(ぢゃ、さよなら。)
砂利は北上山地製、
(あ、僕、車の中へマント忘れた。
すっかりはなしこんでゐて。)
(あれは有名な社会主義者だよ。
何回か東京で引っぱられた。)
髪はきれいに分け、
まだはたち前なのに、
三十にも見えるあの老けやうとネクタイの鼠縞。
(えゝと、済みませんがね、
ぼろぼろの繻子のマント、
あの汽車へ忘れたんですが。)
(何ばん目の車です。)………
(二等の前の車だけぁな。)
Larix, Larix, Larix,
青い短い針を噴き、
夕陽はいまは空いっぱいのビール、
くわくこうは あっちでもこっちでも、
ぼろぼろになり 紐になって啼いてゐる。
(一九二二ヽ六ヽ二ヽ)