西航日録

15話 西航日録 一五、インドの宗教所感

715字 約1分 2010年12月31日 公開

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 二日休養。三日正午、P・O・会社汽船アラビア号に乗り込み、英京ロンドンへ向け出発す。ボンベイ滞在中は間島氏の友誼の厚き、よく百事に注意し、ほとんど至らざるところなく、天外万里の地にありて、本邦同様に、気楽に安心に愉快に正月を迎うることを得たるは、深く氏の好意を謝せざるを得ず。

 余がインドにあるは、僅々二十日間に過ぎず。その間なんらの視察もできざるはもちろんなれども、余の一見深く感じたるは、宗教の一事なり。インド人は宗教あるを知りて国家あるを知らず、儀式あるを知りて政治あるを知らず。これ、その国を失いし第一の原因なり。英国がよくこれを統治し得るは、彼らの信教に関しては毫も干渉せざるによる。また、インドが数千年前非常の進歩をなしたるにかかわらず、今日退歩の極に達し、進取の気風なきは、全くカースト制の余毒なること明らかなり。カーストは大体四大級に分かるるも、これを細別すれば百三十四種あり、その間の圧制実に驚くべきもの多し。これに加うるに、旧習を重んずる風ありて、社会の発達はほとんど絶望のありさまなり。しかしてこのカースト制も守旧風も、みな宗教より起こりしものなれば、インドの宗教の余毒は、よく人を愚かにし、国をほろぼすに至れりといわざるべからず。もし人民の惰弱なる点につきては、気候の影響最も多かるべし。かくのごときは、たれびともみな想像し得るところなれば、余が喋々を要せざるなり。ただ余はこの一事につきて、日本の宗教も、今後は国家的主義と進取的方針とをとるの急要を感ずるなり。

 余、インドの実況を見て、左のごとく所感を述ぶ。

まゝ親の下で苦む印度人

孤児が親ある国を恋しがる

ものいはぬ口まで寒し旅の風

旅の雨我真心を固めけり

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