南半球五万哩

26話 第三、南インド洋船中日記 二六、南アフリカの形勢

1,297字 約3分 2011年10月25日 公開

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 南アフリカは、イギリス領に属するもの十二州あり。

(一) ケープ・コロニー(Cape Colony)二十八万方マイル

(二) ナタール(Natal)三万五千三百七十一方マイル

(三) ズールーランド(Zululand)一万四百五十方マイル

(四) トンガランド(Tongaland)五千方マイル

(五) スワジランド(Swaziland)六千五百方マイル

(六) バストランド(Basutoland)一万三百方マイル

(七) ベチュアナランド(Bechuanaland)二十七万五千方マイル

(八) ローデシア(Rhodesia)四十万方マイル

(九) 南ローデシア(Southern Rhodesia)十四万四千方マイル

(十) ニアサランド(Nyasaland)五万三百九十二方マイル

(十一) オレンジ川コロニー(Orange River Colony)五万三百九十二方マイル

(十二) トランスバール(Transvaal)十一万千二百方マイル

 総計百数十万方マイルはイギリス領なれば、南アフリカ全部英国植民地と称して可なり。そのほか西岸にはドイツ領あり、東岸にはポルトガル領およびドイツ領あり、中部にはフランス領あり、イタリア領あり、べルギー領ありて、欧州列国の植民地、アフリカに集中し、互いに対抗の勢いを持す。そのうち英国が過半の勢力を独占す。

 十二日、快晴。ダーバンはひとりナタール州の要港たるのみならず、トランスバール州に通ずる関門なり。その国境まで三百七マイルにして、中間、先年の戦地多し。ナタール州の首府ピーターマリッツバーグは、ダーバンより七十マイルあり。この日、午前市中を散歩し、午後市庁内の美術館、博物館を一覧し、さらに電車に駕して植物園に至る。いずれも豪州のシドニーなどに比すれば狭小なり。帰路、偶然土人の小学校を入覧す。南アフリカはいまだ義務教育を実施するに至らざるも、慈善的に土人の小学校を設くるあり。幅二間、長さ十間、四壁および屋上みなトタンを用う。市中に酒舗(バー)のいたって少なきは、豪州と異あるところなり。その原因は、労働者はみな土人およびインド人にして、彼らは別に飲食する所あるによる。しかして、瓶詰の酒類を売る商店は豪州よりも多し。これ、ここに住する欧人は酒舗に入らずして、自宅にて飲酒する故なり。当地の物価は英国の二倍、豪州より三、四割高し。絵葉書一枚八銭以上、ビール一杯二十五銭とす。ただ安きものは果物にして、パイナップル一個三銭なり。夜に入るもなお土人が裸体になり、炭のごとき色して、石炭を積み込むに、その歩きおるところは、あたかも石炭の大塊が自然に動きおるがごとく見ゆるは奇観なり。また、土人の水牛の角をキセルとして喫煙するところを写真にて見れば、大根をかじりおるがごときも奇なり。当夕また明月清輝を放ち、その海水に映ずるところ、ことにうつくし。

万里雲晴月一輪、清光入海海如銀、船窓今夜眠難就、照殺天涯孤客身。

(万里の雲はれて明月がうかび、その清らかな光は海を照らして銀色にかがやく。この風景を船窓よりみる今夜は眠るに惜しく、月光はこの天涯に一人旅する身を照らすのである。)

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