南半球五万哩

81話 第九、南米西部およびメキシコ紀行 八一、南米総観

954字 約2分 2011年10月25日 公開

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 南米各国の貨幣の、余が旅行当時における相場を左に示すべし。

ブラジル国一ミル    わが六十銭

アルゼンチン国一ペソ  わが八十七銭

ウルグアイ国一ドル   わが約二円

チリ国一ペソ      わが四十銭

ペルー国一ソル     わが約一円

 当時、英貨一ポンドはおよそわが九円八十銭にして、一シリングはおよそ四十九銭なり。また、南米物産および輸出の概況を示さば左のごとし。

ブラジル国の主要なる物産は、コーヒー、ゴム、砂糖、綿、タバコ等にして、一年の輸出額わが七億五千五百万円に相当す。そのうち三億三千五百万円はコーヒーの収入なり。

アルゼンチン国の物産は、牛馬、肉類、羊毛、麦粉等にして、その一カ年の輸出額七億円余なり。

チリの物産は硝石、銅、ブドウ酒、麦、羊毛等にして、その輸出額二億円余なり。

ペルーの物産は銅、砂糖、米、獣皮、綿、コーヒー等にして、その輸出額六千万円なり。

 南米が近年にわかに発展するに至りしは、欧米各国が資本を投じて、天賦の富源を開鑿せるによる。しかして、商業の全権はドイツ人に占有せられんとする勢いなるも、婦人の衣服や万般の装飾品はフランスに仰ぐ。概して南米はフランスを崇拝する風あり。これに反して鉄道や工業は、英国および北米の経営に出ずるもの多し。また、移民としてはイタリア人の右に出ずるものなし。その数、百万をもってかぞうるほどなり。これに次ぐものをスペイン、ポルトガル両国とす。ただし、行商はほとんどトルコ人の占有に帰し、ブラジル一国だけに百万人のトルコ人住すという。南米人は自ら進みて殖産興業に当たるもの少なきも、その所有せる土地や家屋の借料が工業の隆盛に伴いて騰貴せるために、いながら自然に財産の増殖を見るに至る。その結果、奢侈に流れぜいたくに走る傾向ありて、フランスにて製作する装飾品、美術品の最高価のものの販路は、南米に限るとの評なり。また、南米人の毎年フランス・パリに遊ぶものすこぶる多く、パリを知らざれば交際ができぬといわるるほどなり。アルゼンチン一国だけにて、年々パリに遊びて費やす金額が三千万円の多きに上るという。けだし、南米将来の発展は驚くべきものならん。なかんずくアルゼンチンは南米第一の地位を占むるをもって、その隆運は他州を圧倒するに至らんとは、衆目のみるところなり。

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