婦人問題解決の急務

3話 三 歴史的真理は一夫一婦制の正当を教う

912字 約2分 2020年8月28日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

 両性間に重んずべきはその結婚であるが、その結婚史の発達の跡は、自ら宗教史の発達の跡に似ている。宗教史の初めは自然崇拝であり、日月星辰、山川草木、禽獣虫魚に至るまで、なんらかそれらに偉大なる霊力を感ぜしむるものあれば、(ただ)ちにこれを信仰の対象としてその前に額伏(ぬかふ)し災厄祓除(ふつじょ)、幸福希求の祈祷を捧げたが、人心の統一を欲するや、やがてはその宗教は進化し、多神中の最有力なるものを発見して他を支配せしむるに至り、ついには純然たる一神教とまでなったのである。吾人の結婚史もまたその如く、その原始的生活に於ては人類と他動物との間にさまでの径庭(けいてい)なく、皆雑婚で、目迎え目送って相可(あいか)なりとすれば、直ちに相握手して(はばか)らず、なんらその間に厳粛(げんしゅく)なる制限の存在せぬのであったが、人類に本具の良智良能、換言すれば、その理性自然の命ずる法則に従ってかくの如き雑婚が決して人類の発達を助くるゆえんのものに(あら)ざるを悟了(ごりょう)するに至った。何となれば雑婚の子には母ありて父なく、父あるも父の誰なるやが知れぬ。家の本は夫婦というても、かくの如き家には婦ありて夫なし。即ち仮りにここに家というとも、夫なくんば家を成さぬのである。(ここ)に於て、次いで現れたるものは一夫多妻である。これは気候地理もしくは迷信等諸種の原因あり、また(いや)しむべき掠奪(りゃくだつ)等の歴史もあるが、とにかく権力あり富力あるものが自分一人に沢山(たくさん)の妻を専有するのである。しかしながらかくの如きもまた決して人類の繁栄と進歩とを期すべからざるものなるが故に、次第にこれを否認するに至り、ついに基督(キリスト)()で厳粛なる一夫一婦説を提唱し、世は次第にそれに化せらるるに至ったのである。基督(キリスト)現れて(わず)かに二千年、人類は少なくも有史以来六、七千年の歳月を(けみ)しているのであるから、その前四、五千年間は禽獣と等しき、もしくはこれに近き雑婚あるいは一夫多妻等が持続されつつあったのである。これを思えば今日一部に現れし雑婚に近き自由結婚と、厳粛なる一婦説の良否は、既に採決を経たる自明のものとして歴史的真理が明瞭に吾人に物語りつつあるもの、即ち一夫一婦制は、吾人の理性が天則によって示されたる人類の()むべき当然の道に辿(たど)り着いたものと見なければならぬ。

目次に戻る

目次