11話 第一、周遊の目的および太平洋紀行の部 第一一、哲学的の視察
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そもそも政教子の今度の洋行たるや、その意、欧米政教実際の関係を視察するにあるも、その視察は普通尋常の視察にあらず、哲学的の視察なり。尋常の視察は外面一様の視察に過ぎず、目前直接の視察に過ぎず、哲学的の視察は内部の視察なり、原因の視察なり、道理の視察なり。例えば、西洋は開明国なり、その宗教はヤソ教なり、ゆえに、わが国ヤソ教を用うるにあらざれば、開明国となることあたわずと論定するがごときは、いわゆる尋常一様、皮相外面の視察なり。もしこれに反し、かの国にヤソ教の存する原因を探り、政府のこれを保護する理由を究め、その利害得失を比較審査して、これをわが国の事情の上に考うるがごときは、いわゆる哲学的の視察なり。また、西洋各国の政教の関係を見て、ただちにこれをわが国に適用せんとするは、尋常一様の視察なり。もし、わが国の事情と西洋の事情と比考し、その間接の利害と将来の得失を審査するは、いわゆる哲学的の視察なり。この尋常的の視察は日本人の最も長ずるところなれども、哲学的の視察は日本人の最も長ぜざるところなり。今、余が行はこの哲学的の視察を、欧米各国の政治、宗教、風俗、教育の上に施さんと欲するものなり。