欧米各国 政教日記

10話 第一、周遊の目的および太平洋紀行の部 第一〇、政治と宗教は表裏の関係を有す

825字 約2分 2012年10月21日 公開

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 政教子曰く、政治家は政治の裏面に宗教あることを知らざるべからず、宗教家は宗教の表面に政治あることを知らざるべからず。例えば、政治上いかなる明君明相あるも、その国の人民をして、ことごとく自由を得せしめ、ことごとく幸福を全うせしむることあたわず、いかなる仁君ありて法律を設くるも、貧富貴賤の人をして、ことごとく同等同量の福利を得せしむることあたわず、必ずや一方に満足するものあれば、他方に満足せざるものあり、一方に不平なきものあれば、他方に不平を有するものあり。この不平不満足の心は、必ず幽鬱して病患を結び、激発して争乱を醸すに至るべし。しかるに実際上これをみるに、政治上不平あるものも法律上満足を得ざる者も、みなよく満足して不平を鳴らさず争乱を醸さず、その堵に安んずる者の多きはなんぞや。これ、宗教の影響にあらざるはなし。進みて政治上表面の幸福を得ることあたわざるものは、退きて宗教上裏面の快楽を求め、法律上の不平は流れて宗教内の満足となり、不満不平の人をして、おのおの安心立命の境裏に住せしむるなり。もし世に宗教なかりせば、政治上得たるところの不平は、必ず政治上に向かって発するよりほかなし。けだし政治上の不幸、これより大なるはなし。

 今、わが国の神仏二道は、たとい今日その勢力を減じたりというも、人民これによりて幸福を得しもの幾人あるを知らず、政治これによりて治安を保つことを得たるやまた疑いをいれず。今や政府新たに憲法を設け、人民はじめて自由に就き、政治上一大変動を人心の上に与えんとす。このときに際して、政府は従来の宗教を保持して、人心をして一方に安んずることをえざるも、他方に安んずるところあらしむるは、政教上最も必要なる機密なり。もし、政治と宗教と同時に大変動を生ずるに至らば、国家の不利またこれより大なるはなし。これ、政治家の注目せざるをえざる要点なり。今、余が洋行の挙ある欧米諸国にも、この機密の政教の間に存するを知らんと欲するなり。

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