287話 第一〇、インド洋帰行の部 第二八七、米国とわが国と事情を異にするゆえん
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人あり論じて曰く、今日わが政府の主義は政教分離にあれば、将来の宗教は政府全くこれを放任して、米国のごとく斉民的宗教となすべし。政教子曰く、公認教はもとより政教分離の主義にもとづくものなり。ただし政府が、その国の歴史上に縁故あり、国体民俗に関係ある宗教は、その歴史を保存しその国体を永続するために、特別に保護待遇せざるべからず。決してこれを、今日今時外国より漸入する宗教、別して外国と関係を有する宗教と同一に待遇するの理あらんや。かつわが国今日の勢い、政府全く宗教を放任するときは種々の宗教国内に蔓延し、したがって外国の関係を生じ、宗教の争乱を醸すに至るは自然の勢いなり。果たしてしかるときは、政府が一国の安寧秩序を保つの目的を達することあたわざるべし。かつ我が輩の注意すべき点は、わが国は米国と大いにその事情を異にするゆえんを知るにあり。米国は歴史なき新開の国なり、わが国は歴史によりて建てたる旧国なり。アメリカは平等同権、自由共和の斉民的主義の国なり、わが国は上下貴賤の秩序階級ある国なり。米国は外冠の患いなく外国の関係少なき国なり、わが国はしからず。この三事情につきてこれを考うるに、わが国の事情はかえって欧州各国の事情に類同するなり。ゆえに、政治上宗教を待遇するの法は、米国にその例をとるは不適不当にして、欧州にとるは適当なるべし。もしこれを欧州にとるときは、公認教の制度を置くこと必要なり。