雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート

24話 七月十四日

790字 約2分 2017年6月19日 公開

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「男の子が病身で可哀想でならないときがあるよ。そんなとき、ああ、いっそ、一緒に子供と死のうかと思うね。誰もそんな僕の苦しみを分からないのだ」

「太宰さんのようなお方が、あのような家に住み、こうした御様子をしていらっしゃるかと思うと――苦しんでいらっしゃるんだと思うわ」

「こんなこと、誰にも言ったことがないんだよ。君と僕とは何か肉親のような気がするね」

「ええ、私もときどき兄のような気のするときがありますわ」

「君を死なせないように、死のうとするときに、小麦粉でも飲ませようかと考えたりしたんだけど。君が先に死ぬと言ったね? 残された僕というものを考えたら、ひどいんだ。ひどいよ。先になんぞ死んだら、死骸を蹴(け)飛ばすね、僕は。――ね、一緒に死のう。こんなにも信じているのに」

        *

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        *

 親より先に死ぬということは、親不孝だとは知っています。でも、男の人の中で、もうこれ以上の人がいないという人に出逢ってしまったんですもの。お父さんには理解できないかも分かりませんけど。太宰さんが生きている間は私も生きます。でもあの人は死ぬんですもの。あの人は、日本を愛しているから、人を愛しているから、芸術を愛しているから。人の子の父の身が、子を残して、しかも自殺しようとする悲しさを察してあげて下さい。私も父母の老後を思うと、切のうございます。

 でも、子もいつかは両親から離れねばならないのですもの。人はいつかは死なねばならないんですものね。

 長い間、ほんとうに、ほんとうに御心配ばかりおかけしました。子縁の少ない父母様が可哀想でなりません。

 お父さん、赦(ゆる)してね。とみえの生き方はこれ以外にはなかったのです。お父さんも、太宰さんが息子であったなら、好きで好きでたまらなくなるようなお方です。

 老後を蔭ながら見守らせて下さいませ。

 私の好きなのは人間津島修治です。

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