雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート

25話 七月二十三日

513字 約1分 2017年6月19日 公開

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「それで怒っていらっしゃるんでしょう」

 ハウスで、Mになったので、たいぎで寝すごして夕方帰る。三時頃、太宰さんがおみえになられた由。夕方、心待ちにしてみたけれど、いらっしゃらない。八時まで待ってみて散歩に出る。

 町角に人が立っているので、一つ先の横丁を入ったら、お庭先に出てしまった。奥様が黒いお洋服でお仕事。園子ちゃんが真っ白なパンツ一枚の姿でピーチオ。可愛らしい。西山さんの帰り道に、もう一度寄ると、やっぱり町角に人。スリップ姿の奥様がお子様方を寝かせて、あと始末に忙し気な御様子。お客様かな。

 奥様が健康そうなお姿で……「怒っていらっしゃるんでしょう」と仰言るお声がしたら、何やらボソボソと二声ばかり、暗いお隣りの部屋からきこえる。ああ、もう横におなりだったのかと、ホッとする。

 最初は園子ちゃんで救われたけれど、二度目は太宰さんが何となくお可哀想になってきて胸が塞がる。

 悪いけど、私も奥様は怖い。初めての日の夜――“こわいんだ、僕はこわいんですよ。救ってくれ”と仰言ったお言葉を思い起こす。不幸な家庭。奥様って、女学校の先生のような感じのするお方だと思った。

 御免なさい。奥様。こんな浅ましいことなどして、私は……。

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