25話 七月二十三日
読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
読み上げの速さ
組み方
「それで怒っていらっしゃるんでしょう」
ハウスで、Mになったので、たいぎで寝すごして夕方帰る。三時頃、太宰さんがおみえになられた由。夕方、心待ちにしてみたけれど、いらっしゃらない。八時まで待ってみて散歩に出る。
町角に人が立っているので、一つ先の横丁を入ったら、お庭先に出てしまった。奥様が黒いお洋服でお仕事。園子ちゃんが真っ白なパンツ一枚の姿でピーチオ。可愛らしい。西山さんの帰り道に、もう一度寄ると、やっぱり町角に人。スリップ姿の奥様がお子様方を寝かせて、あと始末に忙し気な御様子。お客様かな。
奥様が健康そうなお姿で……「怒っていらっしゃるんでしょう」と仰言るお声がしたら、何やらボソボソと二声ばかり、暗いお隣りの部屋からきこえる。ああ、もう横におなりだったのかと、ホッとする。
最初は園子ちゃんで救われたけれど、二度目は太宰さんが何となくお可哀想になってきて胸が塞がる。
悪いけど、私も奥様は怖い。初めての日の夜――“こわいんだ、僕はこわいんですよ。救ってくれ”と仰言ったお言葉を思い起こす。不幸な家庭。奥様って、女学校の先生のような感じのするお方だと思った。
御免なさい。奥様。こんな浅ましいことなどして、私は……。