雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート

45話 十一月二十一日

588字 約1分 2017年6月19日 公開

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 いつものように御仕事におみえになる。

 ここ四、五日前から御洋服。「デブちゃんなんだよおー」とおうわさになっていた小説新潮の女のかたもおみえになる。

 井伏先生と、御一緒に写されてある御写真を拝見する。私も欲しいわ。

 三時近くになると、お体の調子も、御疲れになられるせいか「まだ三時か――」などと仰言って、お仕事なさっていられる。

 御酒がお飲みになりたい?

 この間は喀血(かっけつ)なさったし、あまりかんばしいお体ではないんだけど。アダリンと膏薬を買ってくる。

「昨日の朝ね、胸を開いて寝てたんだ。そしたら、里子ちゃんは幸せね、羽左衛門と一緒に寝られて――って女房が来ていうんだ」

 妙布の貼り工合が変わっていらしたから。

 お仕事の方は、私には分からないので、毎日心配しながら、おそばで用事をしているのだけれど、「とてもよく書けるんだよ」と仰言って、書きかけのを、「読んでごらん」とみせて下さる。

 いつものように夕方土手べりを歩いてお送りする。お月様が明るくて、霧のようなものがおりていて、ボーッとした、美しい眺め。

 二人で終戦後のものでは好きな歌だと仰言る「あなたと二人で来た丘は……」というのをハミングする。

 三鷹病院の横を通る。

「入院するようになったら来てね」

「こちらからお願いします」

「頼みますよ。そして、二人でベッドの上で死のう」

 いつものようにお近くの横丁でベーゼ。おやすみなさい。

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