45話 十一月二十一日
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いつものように御仕事におみえになる。
ここ四、五日前から御洋服。「デブちゃんなんだよおー」とおうわさになっていた小説新潮の女のかたもおみえになる。
井伏先生と、御一緒に写されてある御写真を拝見する。私も欲しいわ。
三時近くになると、お体の調子も、御疲れになられるせいか「まだ三時か――」などと仰言って、お仕事なさっていられる。
御酒がお飲みになりたい?
この間は喀血なさったし、あまりかんばしいお体ではないんだけど。アダリンと膏薬を買ってくる。
「昨日の朝ね、胸を開いて寝てたんだ。そしたら、里子ちゃんは幸せね、羽左衛門と一緒に寝られて――って女房が来ていうんだ」
妙布の貼り工合が変わっていらしたから。
お仕事の方は、私には分からないので、毎日心配しながら、おそばで用事をしているのだけれど、「とてもよく書けるんだよ」と仰言って、書きかけのを、「読んでごらん」とみせて下さる。
いつものように夕方土手べりを歩いてお送りする。お月様が明るくて、霧のようなものがおりていて、ボーッとした、美しい眺め。
二人で終戦後のものでは好きな歌だと仰言る「あなたと二人で来た丘は……」というのをハミングする。
三鷹病院の横を通る。
「入院するようになったら来てね」
「こちらからお願いします」
「頼みますよ。そして、二人でベッドの上で死のう」
いつものようにお近くの横丁でベーゼ。おやすみなさい。