危し‼ 潜水艦の秘密

3話 C・C・D潜水艦

1,283字 約3分 2022年7月20日 公開

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 その夜春田博士の実験室では、博士の発明した「C・C・D潜水艦」に用うる、世界最初の無燃料機関の実験をすることになっていた。なにしろこの機関が完全に成功すれば、潜水艦は何十時間でも何百時間でも水底にいられるし、速力も一時間二百哩(マイル)くらい出るので、たとえば水底をくぐって僅(わずか)の間に太平洋横断ができるという、まことに恐るべき発明であった。

 むろん春田博士の発明は、世界中の学者の羨望の的になっているもので、各国の海軍では、どうかしてこの発明を手に入れようと、狂人のように騒いでいるのだった。

 それ故その夜の実験は、春田邸の広庭に離れて建てられた実験室で、ごく秘密に行われるので、招待される人は、海軍少将山川八郎氏、機関大佐横田文人(ふみんど)氏、の二人きり、それに博士と、龍介君に文子さんが助手役となって立合(たちあ)うだけだった。

 実験は八時半からで、もう八時には横田大佐が実験室へ現われた。しかしどうしたことか、山川少将はなかなか姿を見せなかった。

「どうしたのだろう、山川さんは。もう八時三十分ちょっと廻ったがねえ」

 横田大佐は懐中時計を見ながら頭をかしげた。「あの人が時間におくれるなんて珍しい」

 そういっている時、扉(ドア)が明(あ)いて、ぜいぜい息を切らした山川少将があらわれた。

「いや失敬した。途中で自動車に故障がおこったものだから――」

「そうですか、私達はまたどうなすったのかと心配していました。では博士、実験にかかって頂きましょう!」

 横田大佐がそういった。

 実験室の窓や扉(ドア)には、厳重な鉄の鎧戸がぎりぎりと鳴りながらおろされた。そして人々は室(へや)の中央へと集まっていった。

 そこには中央に大きな台を据えて、長さ二米突(メートル)ばかりの複雑なC・C・D潜水艦用機関の模型が取附けられてあった。博士は、まず台の上へ、設計図をひろげて、静かな口調で発明の要点を話しだした。

 龍介は一同からすこし離れた場所にたって、万一の場合にとわたされたモオビルの精巧な小型拳銃(ピストル)を握りしめながら、じっとあたりを警戒していた。

「では模型を動かして実験に取りかかります」博士は一とおり説明を終ると、模型機関のハンドルを握った。

「つまりこのハンドルを引くと、このクランクを伝わって、中心原動桿(かん)に力が起されるのです。……」

 博士の指がハンドルを引くと共に、一種微妙な音をたてながら、複雑極まる機関がしずかに動きはじめた。見ていた山川少将、横田大佐は驚嘆のあまり思わず叫んだ。

「素晴しいものだ!」

「国宝的な発明だ!」

 その時、龍介君はその機関の響きの外(ほか)に、なにかひくい機械の廻転するような物音を耳にした。なんだか分らないが、遠くではない、すぐ近くでしていることはたしかだ、それはリリリリリと、云(い)うかすかな音だった。――と、何をみつけたか、龍介君は突然サッと顔色を変えて叫んだ。

「お父様、実験中止ッ 文子、電灯を消せ」

「どうした龍介、なんだ!」

「設計図と模型を守って下さい。文子早く電灯を消すんだ。早くッ」文子はいわれるままにスイッチを捻(ひね)った。実験室は真暗闇になる、とたん、

「あれ 兄さん」という文子の叫声(さけびごえ)が闇のなかに、けたたましくおこった。

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