危し‼ 潜水艦の秘密

5話 二人の山川少将

1,278字 約3分 2022年7月20日 公開

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 春田博士が大佐と龍介君をつれて自動車で駈けつけた時、山川少将は書斎の長椅子(いす)の上で、頭に繃帯(ほうたい)をして横になっていた。少将は三人の客を迎えると苦笑しながら次のように話しだした。

 少将は博士の実験に立会うつもりで、八時十分前に身支度をすませ、金庫の中から、実験に入用な重要書類を取り出していた。その時、いきなり後ろから頭をひどく殴られて、気絶してしまったのである。それから書生に呼び醒まされた時には、すでに重要書類も曲者(くせもの)の姿も、そこにはなかったのであった。

「すると!」と博士が傍(わき)からいった「あんたは今夜私の実験室へこられなかったのですね」

「そうじゃよ」

「じゃあ、あの山川少将……いや山川少将に扮装した男は何者だろう」

「えッ 俺(わし)に扮装した男じゃと?」

 少将に問われるままに、博士は今夜おこった事件の始終を話した。聞くより少将は跳びあがった。

「や、そりゃたしかにどこかの軍事探偵じゃ、そして発明は無事か」

「はい、設計図や模型は安全……」

「安全ではなかったのです閣下」と龍介君が博士の言葉をさえぎりながら進みでた、「設計図や模型は元のままちゃんとしていますが、しかしそれは皆すっかり盗まれてしまったのです」

「え、何じゃと、それはどう云うわけじゃ」

 少将も、博士も、横田大佐も、意外な龍介君の言葉に面喰らってしまった。

「訳は後でも話せます。閣下、この書斎になにか証拠になるような物は落ちていませんでしたか」

「いや別に……」と少将は考えているようだったが、やがて「おおそうだ、こんな物があったが、何かの役に立つかな」そういって一枚の紙片をさし出した。

 受取った龍介君、ひと眼見るより「あっ」と驚きの声をあげた。それは昼間友達からわたされた暗号文と同じ紙で、しかも同じ筆跡のペン書きでこう書いてあった。「ゴクロウ○マ スミタ○ ウエハ コレデ シツレイ オチノ○ル ○ンセン」

「うん……同じ暗号だな」

「何かわかったかね」傍から博士が心配そうに覗きこむ。

 少年はそれには見向きもせずに、ポケットの中から最初の暗号文を取り出して、照合(てらしあわ)せながら○の部分へ文字を当嵌めにかかった。それは二分と経たぬ間にできあがった。文章はこうなった。

「ゴクロウサマ スミタル ウエハ コレデ シツレイ オチノビル ヤンセン」

「そうだ牧師ヤンセン、メリケン壮太を雇ったのも牧師、まさに此奴(こいつ)だ」

 そう叫んだが――さてそれだけの文章では何がなにやら訳がわからない。

「さあ困った、どういうことがこの文章の中に隠してあるんだろう?」さすがに龍介君、頭を抱え眉をよせて当惑した。「早くしないと、大切な発明は、軍事探偵の手で国外へ持去(もちさ)られてしまうではないか……」

 と、龍介君はもう一度、二枚の暗号文を比べて見たが、さっと悦(よろこ)びの色を見せて少将の前へ走りよった。そして顫(ふる)える声で、

「十日ばかり前、たしかサルビヤ号という外国船が入港しているはずですが、どなたかご存知ありませんか」と、訊ねた。

「ああ横浜へ泊っとるよ、たしか亜米利加(アメリカ)の遊覧船だと思ったが」と少将が答えた。

「それだッ」龍介君は喚くと共に電話器に飛びついた。

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