危し‼ 潜水艦の秘密

7話 怪船上の乱闘

1,350字 約3分 2022年7月20日 公開

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 闇の海上に、魔のように眠っている汽船サルビヤ号の舷側へ、静かについたモータア艇(ボート)があったと見るまに、するすると龍介君を先頭にした、博士、大佐、着剣した銃を持った水兵十名の一隊が、甲板に乗移(のりうつ)った。とたん、

「其処に居るのは誰だ(フウ・イズ・ゼア)」とどなる船員の声、しかし大股に進み出た水兵のためにうんともいわず、その場に殴倒(はりたお)された。「さ船室へ早く」龍介君が喚いた。「額にあざのある男を逃がさないように頼みます!」

 そして真先に、拳銃(ピストル)を握って船室へとびこんで行った。が、意外や そこには既に一人の日本青年が、多勢の外国船員を相手に乱闘のまっ最中だった。

「敵か、味方か!」と龍介君が呼びかけた。

「メリケン壮太だ」と若者が叫んだ「ここは引受(ひきう)けた。あっちへいって早く大事な物を取返してくれたまえ!」

 なる程それは、実験室へ縛ってきたはずのメリケン壮太だ。彼は知らずに犯した売国奴の罪を償うため、自動車の後部(うしろ)にとびつき、身を挺してここへきたのだ。壮太自慢の拳骨(メリケン)がとぶたびに、ばったばったと船員共は倒された。

「よし任せた壮太! それ行け」と一隊は更に船室の奥深く突進した。――捜査は三十分ばかり続いた。しかしついに文子の姿も、額にあざのある男もみつからなかった。

「残念だ、ここまで追詰(おいつ)めて逃げられたか」そういって龍介君が、歯噛みをしながら、ふと見るともなしに見ていると、船室の天井の隙間からうすぼんやりとした光がさして、それが点いたり消えたりするようである。

「やッ」と更に注意して見ると、それは「・・――・――・」という、例の龍介君考案の信号で、「危険助けてくれ」という意味、いわずと知れた文子の信号。

「しめた、この天井に隠れているぞ」

「それ」と、勇み立った水兵たち、手に手に手斧を振り立てて、たちまち子供の通れるくらいの穴があく。待ちかねた龍介君、その穴から天井へ這いこんだ。と、闇の中から、「手を挙げろ(ハンド・アップ)」春田少年なにくそッと、身を沈めるとみるや声のした方へ飛礫(つぶて)のように突掛(つっかか)った。

「畜生(ゴッデム)」と叫びながら、ふいを喰(くら)って倒れる奴、おかせず飛掛(とびかか)ったが、なにしろ相手は大男の毛唐、双手(もろて)で龍介君の首を掴むと見る間に、はっしと床へ叩きつけた……か 否々(いやいや)その時後(おく)ればせに這いあがったメリケン壮太が、後から毛唐の首へ腕をまわして、喉輪(のどわ)責めに締めあげた。

「オオ、オオ、待って呉れ(ウェイト・ミニッ)」と、弱音をあげたが、うんと締める壮太の力に、苦もなくそこへ気絶(おち)てしまった。

「文ちゃん、文ちゃん」叫び立てる龍介の声、闇の中から待かねたように躍り出た文子、兄龍介に抱きついて、

「お兄さん、お兄さん」と唯(ただ)涙にくれるばかりであった。

「坊っちゃん」傍でメリケン壮太が悦(うれ)しそうに叫んだ「こいつですよ牧師ヤンセンは。この鞄(かばん)の中に何もかも入っていますぜ。畜生、これでメリケン壮太の男も立ったぞ」

 そしてヤンセンの尻を力一杯蹴とばした。さっき自分が龍介君にやられたように。

 春田博士の発明を撮影したフィルムも、山川少将の重要書類も、大事な妹も春田龍介君の手柄で無事に戻った。

 それからメリケン壮太は不良青年をやめて、忠実な龍介君の助手として働くことになった。そして、いつでも友達にこういっている。

「へん、おいらの親分は龍介さんで、そしておいらはメリケンの壮太よ、矢でも鉄砲でも持ってこい」

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