江戸の玩具

3話 今戸の土人形

605字 約1分 2003年2月14日 公開

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 御承知の通り、今戸は瓦、ほうろく、かはらけ、火消壺(ひけしつぼ)等種々土を()つて造る所ゆゑ自然子供への玩具も作り、浅草地内、或は東両国、回向院前等に卸売見世(おろしうりみせ)も数軒ありて、ほんの素焼(すやき)上薬(うわぐすり)をかけ、土鍋(どなべ)、しちりん、小さき食茶碗、小皿等を作り、人形は彩色あれど多くは他の玩具(おもちゃ)屋の手にて彩色し、その土地にては素焼のまゝ数を多く焼き出さんがためにてある由。俵の船積が狂詠に「色とりどり姿に人は迷ふらん同じ瓦の今戸人形」(明和年間)とも見ゆ。予記憶せる事あり、回向院門前にて鬻げる家にては皆声をかけ「しごくお持ちよいので御座い」とこの言葉を繰返へしいひ()りしが、予、日々遊びに行けるよりなじみとなり、(おおい)なる布袋(ほてい)の人形をほしいといへるに、連れし小者(こもの)の買はんとせしに、これは山城(やましろ)伏見(ふしみ)にて作りし物にて、当店の看板なればと、迷惑顔(めいわくがお)せし事ありしが、京より下り来し品も、江戸に多くありけるものと見えたり。或る人予に、かゝる事を聞かせし事あり。浅草田圃の(おおとり)神社は野見(のみ)宿禰(すくね)(まつ)れるより、(はに)作る者の同所の市の日に、今戸より土人形を売りに出してより、人形造り初めしとなん。余事なれど(とり)の市とは、生たる鶏を売買せし也。農人の市なれば也。それ(ゆえ)細杷(こまざらえ)も多く売りしが、はては細杷のみにては品物(さび)しきより、縁起物といふお福、宝づくしの類を張り抜きに作り、それに添へてかき込め/\などいふて売りけるよし、今は熊手(くまで)の実用はどこへやら、あらぬ飾物となりけるもをかし。

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