魔法罎

6話

1,193字 約2分 2011年10月9日 公開

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見世(みせ)ものに()(をんな)ぢやないか。」

 一()()(おも)つたほど(ちひ)さかつた。

 が、いぢけたのでも(ちゞ)んだのでもない。吹込(ふきこ)(けむり)惱亂(なうらん)した風情(ふぜい)ながら、何處(どこ)水々(みづ/\)として()びやかに()える。襟許(えりもと)肩附(かたつき)(つま)はづれも尋常(じんじやう)で、見好(みよ)げに釣合(つりあ)ふ。(ちひ)さいと()ふより、……小造(こづく)りに()ぎるのであつた。

 汽車(きしや)(さかさま)()ちて()まない。(けむり)()いのが(いは)(くづ)して、(どろ)()き/\、(なみ)のやうな(つち)(あふ)つて、七轉八倒(しちてんばつたう)あがき(もだ)ゆる。

 (ぞく)に、隧道(トンネル)(もつと)(なが)いのも、ゆつくり()つて敷島(しきしま)(ぽん)(あひだ)()く。

 二本目(ほんめ)()ひつけた(とき)(かれ)不安(ふあん)(ねん)(きん)()ないのであつた。……不思議(ふしぎ)伴侶(みちづれ)である。姿(すがた)(いろ)()らした、朦朧(もうろう)とした(をんな)抱合(だきあ)つた(かげ)は、汽車(きしや)事變(じへん)のあるべき前兆(ぜんてう)ではないのであらうか。

 (かつ)()隧道(トンネル)穿(うが)ちし(とき)工夫(こうふ)鶴觜(つるはし)爆裂彈(ばくれつだん)殘虐(ざんぎやく)(かゝ)つた、(よわ)棲主(ぬし)たちの(まぼろし)ならずや。

 (あるひ)()(しつ)にのみ、場所(ばしよ)機會(きくわい)()つて(かたち)(あらは)す、()()(ひと)怨靈(をんりやう)ならずや。

 と、(さそ)はれた(かれ)も、ぐら/\と地震(なゐ)ふる(はか)(なか)に、一所(いつしよ)()んで()るもののやうな(おも)ひがして、をかしいばかり不安(ふあん)でならぬ。

 靜坐(せいざ)するに()へなく()つて、(きふ)()()つと、(あたま)がふら/\としてドンと(しり)もちをついて、一人(ひとり)苦笑(くせう)した。

 ふと大風(おほかぜ)()んだやうに(ひゞき)()んで、汽車(きしや)(おと)(もと)(かへ)つた。

 (かれ)(あわたゞ)しく(まど)(ひら)いて、呼吸(いき)のありたけを(くち)から吐出(はきだ)すが(ごと)くに(つき)(あふ)ぐ、と澄切(すみき)つた(やま)(こし)に、一幅(ひとはゞ)のむら尾花(をばな)(のこ)して、室内(しつない)(けむり)()く。それが(いは)浸込(しみこ)んで次第(しだい)()える。

 (ゆめ)から()めた(おも)ひで、(あつ)ぼつたかつた(かほ)()でた、()()(ひざ)()いて、()判然(はつきり)向直(むきなほ)つた(とき)(かれ)(いま)までの想像(さうざう)(あま)りな(たは)けさに(また)(ひと)りで(わら)つた。

 いや、知己(ちかづき)でもない(をんな)(まへ)で、獨笑(ひとりわらひ)(ふくろふ)(わざ)であらう。

 冥界(めいかい)伴侶(みちづれ)か、(はか)相借家(あひじやくや)か、とまで(あや)しんだ二人(ふたり)(をんな)が、別條(べつでう)なく、(しか)も、(そろ)つて(うつく)しい(かほ)()げて()たから。

矢張(やつぱ)隧道(トンネル)(なや)んだんだ。」

 と(かれ)(うなづ)いたのであつた。

「そして、(をどり)……(をどり)歸途(かへり)……()着崩(きくづ)した(ところ)()ては、往路(ゆき)ではあるまい。踊子(をどりこ)だらう。(あと)宿(しゆく)あたりに(なに)(もよほ)しがあつて、其處(そこ)()ばれた、なにがし(まち)(えり)ぬきとでも()ふのが、(ひと)(さき)か、それとも(つぎ)(えき)(かへ)るのであらう。……(おどり)(もよほ)しと()へば、園遊會(ゑんいうくわい)かなんぞで、灰色(はひいろ)()黄色(きいろ)()樺色(かばいろ)()の、(いたち)(きつね)(たぬき)(なか)には(くま)のやうなのも(まじ)つた大勢(おほぜい)()に、(ひきまは)され、掴立(つかみた)てられ、(そで)(ふり)(みだ)れたまゝを汽車(きしや)()つた落人(おちうど)らしい。」

 落人(おちうど)()へば、(をど)つた番組(ばんぐみ)(なに)()うした(たぐひ)かも()れぬ。……()(むらさき)(はう)は、草束(くさたば)ねの島田(しまだ)とも()えるが、(ふつさ)りした男髷(をとこまげ)()つて()たから。

 此方(このはう)は、やゝ細面(ほそおもて)で。結綿(ゆひわた)(むすめ)は、ふつくりして()る。二人(ふたり)とも(かつら)(かぶ)つたかと(おも)ふ。年紀(とし)(わか)い、十三四か、それとも五六、七八か、(めじり)(べに)()れたらしいまで極彩色(ごくさいしき)化粧(けしやう)したが、(はげ)しく(つか)れたと()えて、恍惚(うつとり)として(ほゝ)蒼味(あをみ)がさして、透通(すきとほ)るほど(いろ)(しろ)い。()(べに)(おも)(まぶた)(くれなゐ)がなかつたら、小柄(こがら)ではあるし、たゞ(うご)人形(にんぎやう)()ぎまい。

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