三たび東方の平和を論ず

8話 八 支那を奪取するは難し

963字 約2分 2019年4月25日 公開

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 支那にはまた近来河南(かなん)白狼匪(はくろうひ)など称する土匪が起っている。河南といえば支那に於ける中原であるが、彼等は此処(ここ)に起り、将来更に蔓延せんとする有様である。それが盛んに起れば鉄道は破壊さるる。交通はために杜絶(とぜつ)する。従って商売も妨げらるる。()かも中央の力微弱にしてこれを()く制する無しとすれば、投資国は民国政府に信頼せず、自己の投資に対する利益を自ら保護し防禦(ぼうぎょ)するに相違ない。即ち支那の領土を占領する事となるが、占領しても例の支那国民であるから、それより徴税する事は(かた)い。強いて徴税すれば(たちま)ち叛乱が起る。匪賊(ひぞく)が処在に蜂起してこれを征討する列強はために奔命に(つか)るる。即ち沢山(たくさん)の金のみを要してなんらの得るところがない。(いな)、得る処なきのみならず、(かえ)って益々(ますます)損をする。といって資本家連が自分等のためだからとてそれだけの費用を負担するかというに、言うまでもなく不可能である。また如何(いか)に国家が金を掛けて自国の利益を保護せんとするとも、一方国際間には自ずから条約がありて一国の自由にならぬ。また自由になっても支那本部には四億万の人民がある。これを軍事的に統御するは難いとすれば、実に厄介な話である。欧米もこれには(すこぶ)る困難を感ずる。これが我輩の重ねて三たび東方の平和を論ずるゆえんである。

 大体欧米ではよほど支那を研究しているであろうけれども、たびたびその観察を誤っている。少なくも三変している。即ち初めは恐れ、次に(あなど)り、分割を思うたが、後にはその非を悟り、一転して経済的に利権の獲得を試みた。ところが意外にも支那に利権回復熱が高まり、米が広東(カントン)に鉄道の敷設を(はじ)むるとこれを拒む。独逸(ドイツ)山東(サントン)に鉱山の採掘を始むると、また躍起運動を開始してこれを拒み、いずれもその利権を取戻した。そこで列強はここに利権獲得の困難を悟り、今度は支那の事業に資本を貸し与える。すると()んと欲する物、その物は安全に獲らるる。これが支那国民の自尊心を一方に満足せしめて、他方に十分の利益を我に収め得るゆえんであるとした。(しか)るに更に意外にも革命が起り、金をさえ貸すなら担保にはなんでもかでも求めらるるままに提供する事となった。即ち今日は資本的征服と言っては語弊があるか知らぬが、列強は支那に対して盛んに資本的開発を試みている。これを以て最も将来有望にして且つ利益の多く来るものとした。

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