随筆銭形平次 19 探偵小説このごろ

2話 アメリカにも「捕物帖」があった

646字 約1分 2016年2月2日 公開

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 江戸川 そうすると、あなたの銭形平次はだんだん文学的になってきているわけだな。もっとも捕物帖は、時代が古いから外国の探偵小説みたいに自由自在に謎をつくるわけにいかんから苦心させられるな。

 野村 江戸時代という魅力があるんで、書いていても楽しい。

 江戸川 ところで、ぼくは最近アメリカの捕物帖を発見したんだ。作家はポーストといってヴァン・ダイン(「グリーン家の惨劇」の作者)より古い。作品の時代はアメリカの南北戦争より前、開拓時代になっている。幌馬車と牧場のころなんだ。銭形平次に相当する名探偵は「アブナー叔父さん」といって、牧場主なんだ。これが、すべての作品に登場してきて、ズバリズバリと明快な推理をやるんだが、そういう素朴な時代だから犯罪のトリックも捕物帖ていどの簡単なものだ。捕まった犯人が裁判にかけられたりするんだが、政治も法律も自分たちがつくったものだという考え方が作中にあふれていて、たいへん面白い。この種の小説の作家としてはエドガァ・アラン・ポウ以後ヴァン・ダインまでの最大の作家でアメリカでも珍重されているらしい。

 野村 探偵小説にしてもその時代のふんい気が重大だね。

 江戸川 あなたは捕物帖にユーモアもいれていますね。

 野村 わたしは「銭形平次」はユーモラスな会話で江戸時代の洒落(しゃれ)を出したい、アメリカ映画流儀の気のきいた会話で筋を進めるようにしたいと思っているんだが、「池田大助」の方はこれとは趣きを変えて、ストーリーを主にする。こういう風に二つの捕物帖を区別してあるんだ。

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