海底の魔術師

11話 魚形潜航艇

1,999字 約4分 2016年12月24日 公開

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 潜水夫たちがハヤブサ丸にかえって、怪物のことを報告しますと、船の中は、大さわぎになりました。宮田さんをはじめ、おもだった人たちが、いそいで船長室に集まり、相談をはじめました。

「やっぱり、この船についてきたのですね。むろん金塊をぬすみだすつもりでしょう。なんとかして、それをふせがなければなりません。」

 宮田さんが、あおざめた顔で心配そうにいいました。すると、船長もうなずいて、

「こんな怪物は、われわれの手では、どうすることもできません。場合によっては、海上自衛隊の応援をたのまなければなりますまい。海の中へ、大砲でもうちこんで、ころしてしまうほかはありません。いずれにしても、無電で本社へ相談します。そして大阪から、応援隊を送ってもらいます」

 すると、そのせきにいたサルベージ会社の技師が、口をひらきました。

「それにしても、時間がかかりますね。怪物はもう金塊のありかを、さがしだしたかもしれませんよ。そして、ぬすみだされてしまったら、もうおしまいです。……船長、あれをつかってみたら、どうでしょう。」

「ダイビング=ベルかね。」

「そうです。あれにぼくがはいって、怪物を見まもっているんです。いくら鉄の人魚でも、あの機械なら、どうすることもできないでしょう。」

「うん、そうでもするほかはないね、じゃあ、きみがはいってくれるか。」

 ダイビング=ベルというのは、あつい鉄でできた大きな玉のような潜水機です。その中に人間がはいって、海の底へ沈むのです。

 鉄の玉には、あついガラス窓があり、その上にサーチライトのような強い水中電灯がついていて、海の中がよく見えるのです。

 また、その鉄の玉には二本の鉄のうでがあって、そのさきは、ものをはさむ大きなツメになっています。鉄のツメです。

 サルベージ会社では、潜水夫がもぐれないような深い海底の仕事をするときに、この潜水機をつかうのですが、船長は、まんいちのことをかんがえて、その機械を船につんできたのです。

 ハヤブサ丸には、重い潜水機をあつかうための小型のクレーン(起重機(きじゅうき))がそなえてありました。数名の船員が、クレーンを動かして、ワイヤーロープで、船倉から潜水機をつりあげ、その中へ、技師がはいりました。それから、機械を密閉すると、クレーンのむきをかえて、海面につき出し、そろそろと、潜水機を海の中へおろすのでした。

 潜水機の中は、ちょうど飛行機の操縦室のように腰かけたまま、なんでもできるようになっていました。席の前に、いくつもボタンがついていて、それをおせば、外の鉄のうでや、鉄のツメを自由に動かすことができるのです。

 技師は、ガラスののぞき窓から、じっと海の中を見ていました。機械はぐんぐんさがっていきます。窓の上の強い電灯の光で、十メートルさきまでも、はっきり見えます。その光の中を、大小さまざまの魚類が、右に左に泳いでいるさまは、じつに美しいけしきでした。

 潜水機は、沈没船のハッチの中へははいりませんから、ハッチの入口のそばまでいって、そこで見はっているつもりなのです。

 窓から見ていると、海底の沈没船が、だんだん大きくなってきます。つまり、こちらがその方へ近づいていくのです。

「おや、おそろしく大きなさかなだぞ。」

 技師はおもわず、ひとりごとをいいました。電灯の光もとどかない、ずっとむこうの方から、クジラの子どもとでもいうような、でっかいさかなが、こちらへやってくるのが見えたからです。

 このへんにもクジラがこないとはいえませんが、どうもクジラともちがっていました。それに、おかしいのは、目がおそろしく大きくて、自動車のヘッドライトみたいに、ギラギラ光っていることです。まるでメダカのように目が大きくて、しかもメダカの何万ばいもあるずう体をしているのです。こんなへんなさかなが、ほんとうにいるのでしょうか。

 そんなことを考えているうちに、その巨大なさかなは、だんだんこちらへ近づいてきました。目が大きいばかりでなく、口が五月のぼりのコイのように、まんまるです。そして、その口がすこしも動かないのです。目の光は、ますます強くなってきました。まるでサーチライトのように、その前の水が、パッと明るくてらされているではありませんか。巨大なさかなの背中には、すきとおった空気ぶくろのようなものがついています。ひらべったいふくろです。

「や、や、あれはさかなじゃない。潜航艇だっ。魚形潜航艇だっ。」

 技師はおもわず、とんきょうな声で叫びました。それは鉄でできていたのです。二つの目と見えたのは、潜航艇のヘッドライトだったのです。あのまるい口は、ひょっとしたら、大砲のつつ先なのかもしれません。

 それにしても、このへんてこな潜航艇は、いったい、どこの国からやってきたのでしょう。いやいや、どこの国でもない。これはきっと、悪魔の国からやってきたのにちがいありません。

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