『春と修羅』

30話 グランド電柱 風景観察官

260字 約1分 2000年10月4日 公開

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あの林は

あんまり緑青(ろくしやう)を盛(も)り過ぎたのだ

それでも自然ならしかたないが

また多少プウルキインの現象にもよるやうだが

も少しそらから橙黄線(たうわうせん)を送つてもらふやうにしたら

どうだらう

ああ何といふいい精神だ

株式取引所や議事堂でばかり

フロツクコートは着られるものでない

むしろこんな黄水晶(シトリン)の夕方に

まつ青(さを)な稲の槍の間で

ホルスタインの群(ぐん)を指導するとき

よく適合し効果もある

何といふいい精神だらう

たとへそれが羊羹(やうかん)いろでぼろぼろで

あるいはすこし暑くもあらうが

あんなまじめな直立や

風景のなかの敬虔な人間を

わたくしはいままで見たことがない

(一九二二、六、二五)

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