『春と修羅』

36話 グランド電柱 天然誘接

899字 約2分 2000年10月4日 公開

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  北斎(ほくさい)のはんのきの下で

  黄の風車まはるまはる

いつぽんすぎは天然誘接(てんねんよびつぎ)ではありません

槻(つき)と杉とがいつしよに生えていつしよに育ち

たうとう幹がくつついて

険しい天光(てんくわう)に立つといふだけです

鳥も棲んではゐますけれど

(一九二二、八、一七)

原体剣舞連(はらたいけんばひれん)

  (mental sketch modified)

   dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

こんや異装(いさう)のげん月のした

鶏(とり)の黒尾を頭巾(づきん)にかざり

片刃(かたは)の太刀をひらめかす

原体(はらたい)村の舞手(をどりこ)たちよ

鴾(とき)いろのはるの樹液(じゆえき)を

アルペン農の辛酸(しんさん)に投げ

生(せい)しののめの草いろの火を

高原の風とひかりにさゝげ

菩提樹皮(まだかは)と縄とをまとふ

気圏の戦士わが朋(とも)たちよ

青らみわたる気(かうき)をふかみ

楢と椈(ぶな)とのうれひをあつめ

蛇紋山地(じやもんさんち)に篝(かがり)をかかげ

ひのきの髪をうちゆすり

まるめろの匂のそらに

あたらしい星雲を燃せ

   dah-dah-sko-dah-dah

肌膚(きふ)を腐植と土にけづらせ

筋骨はつめたい炭酸に粗(あら)び

月月(つきづき)に日光と風とを焦慮し

敬虔に年を累(かさ)ねた師父(しふ)たちよ

こんや銀河と森とのまつり

准(じゆん)平原の天末線(てんまつせん)に

さらにも強く鼓を鳴らし

うす月の雲をどよませ

  Ho! Ho! Ho!

     むかし達谷(たつた)の悪路王(あくろわう)

     まつくらくらの二里の洞(ほら)

     わたるは夢と黒夜神(こくやじん)

     首は刻まれ漬けられ

アンドロメダもかゞりにゆすれ

     青い仮面(めん)このこけおどし

     太刀を浴びてはいつぷかぷ

     夜風の底の蜘蛛(くも)をどり

     胃袋はいてぎつたぎた

  dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

さらにただしく刃(やいば)を合(あ)はせ

霹靂(へきれき)の青火をくだし

四方(しはう)の夜(よる)の鬼神(きじん)をまねき

樹液(じゆえき)もふるふこの夜(よ)さひとよ

赤ひたたれを地にひるがへし

雹雲(ひよううん)と風とをまつれ

  dah-dah-dah-dahh

夜風(よかぜ)とどろきひのきはみだれ

月は射(い)そそぐ銀の矢並

打つも果(は)てるも火花のいのち

太刀の軋(きし)りの消えぬひま

  dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

太刀は稲妻萱穂(いなづまかやぼ)のさやぎ

獅子の星座(せいざ)に散る火の雨の

消えてあとない天(あま)のがはら

打つも果てるもひとつのいのち

  dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

一九二二、八、三一

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