影 (一幕)

1話 影 (一幕)(1)

394字 約1分 2013年8月20日 公開

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登場人物――重兵衛(じゅうべえ)太吉(たきち)。おつや。旅人。巡査。青年甲、乙。

現代。秋の夜。

相模国(さがみのくに)石橋山(いしばしやま)の古戦場に近き杉山の一部。うしろに小高き山を負いて、その裾の低地に藁葺(わらぶ)きの炭焼小屋。家内は土間にて、まん中に()を切り、切株(きりかぶ)又は石などの腰かけ三脚ほどあり。正面は粗末なる板戸の出入口。(しも)のかたには土竈(どがま)、バケツ、焚物(たきもの)用の枯枝などあり。その上の棚には膳、(わん)、皿、小鉢、茶を入れたる罐、土瓶(どびん)、茶碗などが載せてあり。ほかに簑笠(みのがさ)なども掛けてあり。(かみ)のかたには寝室用の狭き一間(ひとま)、それに破れ障子を閉めてあり。(しも)のかたには型ばかりの竹窓あり。炭焼の(かま)は家の外、(かみ)のかたの奥にある心にて、家の左右には杉の大樹、(すすき)なども生い茂っている。

月明るく、(ふくろう)の声。

(棚には小さきランプを置き、炭焼男の重兵衛、四十五六歳、炉の前で焚火をしている。やがて大きい湯沸(ゆわか)しにバケツの水を汲み入れて、炉の上の自在(じざい)にかける。障子の内にて子供の声。)

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