46話 白木の箱 四十六
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「さてはや、何でげすえ御到来物は。」と円輔は洋燈の方へ顔を突出し、源次は柱に天窓を着けて片陰で仰向いた、この両人、胴中を入違いに、長火鉢の前で形がX《エッキス》。
「どうもお相伴を難有うございますよ。」と向へ坐ったのは、遣手が老いたりという面構、目肉が落ちたのに美しく歯を染めている、胡麻塩天窓、これが秘薬の服方、煎法、堕胎した後始末、体の養生まで一切取計った、口の臭い、お倉という婆である。
蝶吉は、確に小包を請取ったので、かくとは思い懸けず、慎みながら、若いから、今も今で、かねていいつけられて窘んだ、花札を引いて、気の衰えるまで負けて帰ったので、済まなさも済まないし、嬉しさも嬉しければ、包んでも色に出る極の悪さ。震える手で明い処へ持出して、顔を見られまいと、傍目も触らず、血の上った耳朶を赧うして、可愛らしく畏って、右見左見、
「おやおや、大倭家内松山峰子様行と書いてあるねえ。」
「峰子様、よッ。」と懸声をするは円輔なり。
「可くッてよ、」と可愧しそうに、打返してまた裏を見た。
「神月より、……おや、平時の字と違ってやしなくッて?……何だか手が違ってるようだねえ。」
あえて疑うというではないが、まさかと思う心から人にも、確めてもらいたいので、わざと不審げに呟いた。
「わざッと手を替えてお書きなさいましたあね、そりゃ、お前さん。」と婆々は極めて鹿爪らしい。
「そうねえ、何だか包が大きいわねえ、何だしら。」
玉手箱という形で両手に据えながら目を瞑る。
「何でげしょう。」
「何だか、」
「そうさね。」
「一番あてッこで、丁と出たらまた頂戴は、どうでげすえ。」
源次は鷹揚に、
「下司張るな下司張るな。」
「どうせ詰らないものよ。」と蝶吉は笑いたそうにして押耐える。
円輔は例に因って、
「よッ!」
「沢山おひゃらかして下さいな。」と怒ったのでも何でもない、いそいそ膝の上へ抱下して斜にした。
蝶吉は簪を抜いて、そっと持って、
「邪険に封をしてさ。」といいいい、名工が苦心の眼で、瞶めて、簪の尖で、封じ目を切って解く。
上包はくるくると開いて、やまと新聞の一の面が颯と膝の上に広がった。中は、中は、手文庫ばかりの白木の箱。
「さあさあ御覧じろ、封が解るに従うて、お蝶さんの、あの顔が段々弛んで来る処を、」
「どういう訳だか、不思議なもんさね、」と源次郎は憎体な。
「私沢山だ。」
「何もお前さんそんなにつんとすることはないじゃありませんか、頬を膨らしてさ。」
「一生懸命でおいで遊ばす、さあ、耐らない。ほれ、」
「それ笑った。」
蝶吉は莞爾して、
「御免なさい、」というかと思うと、引攫うように小包を取って、裳を蹴返すと二階へ、ふい。
驚いたのは円輔である。ぐんにゃりとなって、
「豪い!」