7話 電話の秘密
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明智が受話器をおいて、そのことを伝えると、所長の松波博士と、小林少年は、顔を見合わせて驚きました。
「しかし、わたしは、さっき、あちらの部屋の電話で、たしかに一一〇番へかけたのですが、そうすると、ほんとうのパトカーは、まだやって来ないのでしょうか。」
松波博士が、ふしんそうに、つぶやきました。
「そんなはずはありません。さっきから、ずいぶん時間がたってます。パトカーがそんなにおくれるはずはありません。これにはなにかわけがあるのです。」
明智はそう言って、前にある電話のダイヤルを回して、受話器を耳にあてていましたが、
「おかしい、電話が故障のようです。調べてみましょう。」
といって、エジプト室からかけ出すと、むこうの博士の研究室にはいって、そこの電話をかけてみましたが、これもだめなことがわかりました。
明智はそれから、電話線を調べたり、窓を開いて、暗い庭をのぞいたりしていましたが、なにを思ったのか、いきなり、部屋を飛び出して、階段をかけおり、庭へ出ていくのです。
庭のすみに小さい物置小屋があります。明智は用意していた懐中電灯をつけて、その小屋の戸を開き、中をのぞきこみました。
「あっ、ここです。ここに電話器があります。」
と叫びました。
「二十面相は、あの二つの電話の線を切って、別の線でこの電話につないでおいたのです。そして、ここに部下を待たせておいて、一一〇番の警官のような声で、答えたのです。ですから、ほんとうの一一〇番へは、電話はかからなかったのですよ。」
これで、ほんもののパトカーが、来ないわけがわかりました。
「いつのまに、こんな準備をしたのか、おそろしいやつです。」
松波博士は、あきれかえって、つぶやくのでした。
小林少年は明智探偵のさしずで、門の外へかけ出していって、赤電話で、警視庁にこのことを知らせました。
博士と明智探偵は、もとのエジプト室にもどって、話し合っていました。
「それにしても、エジプトの巻き物が助かったのは、ありがたいです。犯人には逃げられたけれども、巻き物の箱はちゃんとここにありますからね。
まったく明智さんのおかげです。」
松波博士は、テーブルの上の銀の箱をひらき、中に巻き物がはいっているのを確かめながら、お礼を言うのでした。
「しかし、まだ油断はできません。こんどは、どんな手で盗み出しにくるかもしれません。できるなら、このエジプト室には、銀の箱だけをおいて、中の巻き物はべつの箱に入れて、どこか、ほかの場所へかくしたほうがいいのですがね。」
明智が言いますと、博士もうなずいて、
「わたしも、それを考えていたところです。わたしは世田谷区の静かな町に、自分のすまいを新築して、それができあがったばかりなのです。この巻き物を、なんでもない木の箱に入れて、毎日そのすまいのほうへ、持って帰ることにしようと思います。」
「そうなさったほうがいいでしょう。なるべく目だたない、つまらない木の箱に入れてね。」
それからしばらくすると、警視庁の中村警部が、三人の部下を引きつれてかけつけてきましたが、これという、新しい発見があったわけでもありませんから、そのことははぶきます。
さて、木箱に入れた巻き物の運命はどうなるのでしょう。むろん、二十面相は、それを盗み出すことをあきらめてはいません。やがて、また、二十面相はふしぎな魔法をつかい、なんとも、えたいのしれない、恐ろしいことをはじめるのです。
それから三日目の夜、松波博士の新しい家の中で、ふしぎなできごとがおこったのですが、それを見たのは、博士邸のとなりに住んでいる西村さんという、会社の重役の子どもの正一君でした。