大宇宙遠征隊

10話 修理困難

1,806字 約4分 2004年4月7日 公開

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「鳥原さん、宇宙塵て、一体、どんなもなの。さっきから、宇宙塵だ宇宙塵だという話ばかりで、ぼくは面くらっているんだよ」

「なんだ、()ぶちゃんは、あの宇宙塵を知らないのか」

 と、鳥原青年は、鼻のあたまを手でこすった。

「宇宙塵というのは、わかりやすくいうと、星のかけらのことさ」

「星のかけら? じゃあ、隕石(いんせき)のこと」

「そうそう、隕石も、宇宙塵のお仲間だよ。隕石は、地球へおちてくる宇宙塵のことだけれど、この大宇宙には、地球へおちてこない星のかけらがずいぶん宇宙をとんでいるんだ。時には、それがまるで急行列車のように、或いは集中砲火のように、砂漠の嵐のようにとんでくるんだ。いや、それは、とてもわれわれ人間の言葉ではいいつくせないほど、ものすごいものなんだ。ちょうど本艇は、運わるく、その宇宙塵にぶつかったんだ。いや、宇宙塵が、斜めうしろからものすごいいきおいで追いかけてきたんだ。そして、あっという間に、がんがんがんと、うしろから本艇を叩きつけて通りすぎてしまったのだが、そのときに、宇宙塵が本艇の噴気孔を叩き壊していったらしいという話だ」

「へえ、宇宙塵というやつは、ものすごいねえ」

「そうさ。空の匪賊(ひぞく)みたいなものだ」

「空の匪賊だって、鳥原さんはうまいことをいうねえ」

「はははは。さあ、私もむこうへいって、手つだってこよう」

 鳥原青年は、向こうへいこうとする。

「あ、鳥原さん。待ってくださいよ」

「なんだ、三ぶちゃん。君は、本艇が故障を起したので、ふるえているのかね。元気を出さなくちゃ……」

「ふるえているわけじゃないよ。ただ、一刻も早く、ほんとうのことを知りたいのだよ。――で、本艇は、これから、どうなるのかね。どんどんと、宇宙の(はて)へおちていくのかしらねえ」

「さあ、それは何ともいえない。今、本艇の総員が力をあわせて、故障の個所発見と、それを一刻も早く直す方法を研究中なんだ。もうすこしたたないと、はっきりしたことは、だれにも分らないのだ。さあ、私もここでぐずぐずしてはいられない」

 そういって、鳥原青年は、足を早めて、廊下を向こうへかけだしていった。

 三郎は、しばらく廊下ごしに、艇内のあわただしい有様を見ていたが、みんなが、しんけんな顔でとびまわっているのが分るだけで、本艇の運命が、いい方へすすんでいるのか、それともわるい方へかたむいているのか、さっぱりわからなかった。それで、仕方なく彼は廊下見物をあきらめて、また元のように艇長室へ戻ったのだった。

(こんなさわぎにぶつかるんだったら、本艇にのりこむ前に、もっと宇宙のことを勉強してくるんだったのになあ)

 三郎は、今さらどうにもならぬ後悔をした。

「そうだ。早く艇長さんが帰ってこられるといいんだ。そうそう、こんどこそ艇長さんの口にコーヒーが入るように、用意しておこうや」

 三郎は、三度目のコーヒー沸しを始めた。コーヒーは沸いた。

 しかし、艇長辻中佐は、部屋へかえってこなかった。

「ああ、()しいねえ。今、艇長さんがもどってこられると、コーヒーのおいしいところがのめるのだけれど……」

 艇長のもどってくる様子はなかった。

 三郎は、なんとかして、こんどこそは艇長にコーヒーをのませてあげたくて仕方がなかった。なにかいい方法はないであろうか。

 三郎は、しばらく小さい胸をいためて、考えていたが、やがて思いついたのは、今沸かしたコーヒーを、魔法瓶の中に入れて、司令室にいる艇長のところへ持っていくことだった。

「ああ、それがいいや」

 三郎は、元気づいた。早速(さっそく)魔法瓶にコーヒーをつめて司令室へ持っていった。

 ふくざつないろいろな器械にとりまかれた司令室で汗まみれになって、次々に号令を下していた艇長辻中佐は、三郎の持って来た思いがけない好物の飲物をうけとって、たいへんよろこんだ。

「ああ、艇夫。お前はなかなか気がきく少年だ。ありがとう。これで元気百倍だ」

 艇長は、湯気のたつコーヒーをコップにうつして、うまそうに、ごくりとのどにおくった。そこで三郎はたずねた。

「艇長。本艇の故障は直りそうですか」

「うん、極力やっているが、飛びながら直すのはちと無理らしい。この調子では、本艇を陸地につけて直すことになるらしい」

「本艇を陸地へつけるというと、またもう一度地球へ戻るのですか」

「いや、地球までは遠すぎて、とても引返せない。着陸するのなら、月の上だよ」

「へえ、月の上に着陸するのですか」

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