大宇宙遠征隊

11話 月世界へ

1,365字 約3分 2004年4月7日 公開

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 月の上に着陸するのだという。

 それをきいて、風間三郎少年のおどろきは大きかった。月といえば、いつも地球のうえでうつくしくながめていたあの月だ。三日月になったり、満月になったりする月。雲間にかくれる月、兎が(もち)をついているような汚点(おてん)のある月、いや、それよりも、いつか学校の望遠鏡でのぞいてみた月の表面の、あのおそろしいほどあれはてた穴だらけの土地! その月の上に着陸するときいては、三郎少年の胸は、あやしくおどるのだった。

「艇長。月の上へ着陸できるんですか」

 三郎は、辻中佐に、たずねないではいられなかった。

「それは出来る。なかなかむつかしいが、出来ることは出来る。わしは一度だけだが、月の上へ降りたことがある」

 さすがに艇長だけあって、辻中佐は、月の上に降りたことがあるという。三郎は、それをきいて、まず安心したが、しかしどうして月の上に降りられるのか、またどうして月の上で、人間がいきをしていられるのか、ふしぎでならなかった。

「艇長。月の上には空気がありませんね。すると人間は、呼吸(いき)ができないではありませんか」

「それはわけのない話だ。酸素吸入をやればよろしい。われわれも現に噴行艇の中で、こうして酸素吸入をしながら安全に宇宙をとんでいるではないか。だから、月の上に降りれば、一人一人が酸素吸入をやればいいのだよ」

「なるほど、そうですか。じやあ、一人一人が、酸素のタンクを背負うのですね」

「まあ、そうだよ」

 三郎少年は、やっとわかったような気がした。月の上へ降りて、背中に酸素のタンクを背負っている姿を考えると、ちょっとおかしい。

「おい、艇夫。もう外に、心配なことはないかねえ」

 艇長は、からになったコーヒー茶碗を、三郎にかえしながら、たずねた。

「いきをすることが、うまく出来るなら、もう心配はありません」

 三郎は、そう思っていたので、そのとおり返事をした。すると艇長はにやにや笑いだした。

「艇夫、お前は、月の世界へいってから、ずいぶん意外な思いをするにちがいない。今からたのしみにしておきなさい」

「なぜですか、艇長。意外なことというと、どんなことですか」

「まあ、今はいわないで置こう。とにかく、お前たちが月の上に安全に降りられるようにと、ちゃんとりっぱな宇宙服が用意してあるから、安心をしていい。それを着て、月の上を歩いてみるのだねえ。きっと目をまるくするにちがいない。まあ、後のおたのしみだ」

「そうですか。早くその宇宙服を着てみたいですね」

「そのうちに、宇宙服の着方を、だれかがおしえてくれるだろう」

 艇長と三郎とが、そんな話をしているうちに、またまた艇長のところへ、報告がどんどんあつまってきた。機関部からも、機体部からも、航空部からも、どんどん報告がやってきて、艇長は、また前のような忙しさの中に入ってしまった。

「ふむ、ふむ。やっぱり無理か。よろしい、では、本艇を月に着陸させることにしよう」

 機関部の報告によれば、このままでは、どうにもならぬということなので、艇長はついに決心をした。

「命令。本艇の針路(しんろ)を月に向けろ」

 航空士は、直ちに(かじ)をひいて、噴行艇の針路をかえた。

 艇長は、また叫んだ。

「命令。月に着陸の用意をせよ。――それから、本隊司令に対し、連絡をせよ」

 いよいよ艇内は、総員の活動で、にわかにさわがしくなった。

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