大宇宙遠征隊

20話 怪物の訊問

2,112字 約4分 2004年4月7日 公開

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 ゆるやかに、ごろんごろんと落ちていったので、二人はべつにけがをするようなこともなかった。そして三分の二ばかりころげおちた途中で気がついて、三郎は岩かどにつかまって、おちていく自分の身体を支えたのであった。

「おい、クマちゃん。岩にしがみつけ」

 とさけんだが、この三郎のこえは、もちろん木曾にとどくはずがなかった。そして木曾は、あいかわらずごろんごろんところがって、御丁寧(ごていねい)にも、怪物団の足もとまでころげおちて、やっとそこへからだは停まった。

「ちぇっ、まずいことをやったなあ」

 怪物団の方では、気がついて、さわぎはじめた。木曾は、たちまち彼等のためにとりおさえられるし、三郎も、木曾をたすけようか、それとも報告のためにこのまま引きかえそうかと考えているうちに、いつのまにか彼等のため、とりかこまれてしまった。

 二人は、やがて怪物団の前に、引きすえられた。さあ、つつき殺されるか、生き血をすわれるのか。三郎は、もう死を観念して、どうでもなれと、大きな眼をむいて、相手をにらみつけていた。

 怪物たちは、岩かどにこしをおろし、二人を見すえながら、頭をよせて何か話をしている様子であったが、もちろん怪物たちのこえは一向(いっこう)にきこえない。

 三郎は、この間に、怪物のすがたを、くわしく見ることができた。

 とおくから見ると、この怪物は、甲虫(かぶとむし)かペンギン鳥のように思われたが、そば近く見ると、かならずしもそうではなかった。甲虫やペンギン鳥よりもずっと高等な動物のように見えた。というのは、まず第一に彼等は触角みたいなものをふりながら、おたがいに話をしている様子である。しかも、話をしながら、いろいろと、こまかく身ぶりをするところを見ても、猿なんかよりも高等な智慧(ちえ)をもった動物のように見えた。

 全くふしぎな、気持のわるい生物である。

 その怪物は、くるくるうごく、大きな顔をもっていた。顔のまん中には、蜻蛉(とんぼ)の眼玉のようにたいへん大きな眼があった。そしてその下に、黄いろい(くちばし)がつきでていた。頭の上は白く禿()げているところがあり、頭の上には、りっぱな角のような触角が二本、にゅっと出ていた。頭の、その他のところは河馬(かば)のように妙にうす赤い色をおび、てらてらと光っていた。

 それから胴は、鳥のようにふくれていた。しかし腹のところは、鎧をきたようになっていて鳥とはちがう。背中には、甲虫の(はね)と同じような翅が畳みこまれているようであった。その翅のつけ根の横には、触角とはちがい、もっとぐにゃぐにゃしたゴム製の管のようなものがついていた。それはたいへん長くて、地上に達していたが、うごいているうちに、急に短くちぢんでしまうこともあった。これは手の代用物であろう。触手というものかもしれない。とにかく、いまだきいたこともないふしぎな生物であった。

 もう一つ、ふしぎなのは、その怪物の足であった。足は、その怪物の下腹のところから二本にゅっと出ていた。その足はちょっと見ると、鶴の(あし)に似ていた。しかしよく見ると、関節が二つもあり、大地をふまえるところには、五本の指があって、水かきのようなものがついていた。しかもこの奇妙な足は、どこから見ても丈夫に見えた。何だか、金属を組合わせて足の形にしたもののようにも見えた。

(一体、何だろう。この高等怪物は……)

 三郎は、そばへぴったりすりよってくる、木曾九万一の身体をかかえながら、眼をみはった。

 その怪物の中に、どうやら大将らしい怪物があった。その怪物は他の怪物と、しきりに連絡をしていたようであったが、やがて連絡がすんだのか顔を二人の方に向けた。

「おい、君たちは、日本人だろう」

 その怪物が、いきなり日本語で話しかけてきた。それには三郎は、びっくり仰天(ぎょうてん)した。

「ええっ!」と、三郎はいったきり、全身から、汗がふきだしてたらたらと流れた。

 ふしぎだ。なぜその怪物は、日本語をはなすのであろうか。第一空気もないのに、なぜその怪物のはなしが、三郎の耳にきこえるのであろうか。

 三郎はわが耳をうたがった。

「これこれ、べつに君たちの生命をおびやかすつもりはないから、安心して、われわれの問いにこたえなさい。君たちは日本人だろうね。今、かおいろをかえたじゃないか」

 怪物の首領は、にくいほど、はっきりした口調で、三郎たちに話しかけてくるのであった。

 三郎は、こたえたものかどうかと、考えているうちに、木曾が前にのりだした。そして手をあげて、何かものをいうような恰好(かっこう)をした。

 すると怪物の首領は、大きな頭をふって、うなずき、

「おお、そうか。君は、なかなか勇気があってえらいぞ。そうか、君たちはやっぱり日本人だったか」

 木曾が何かいったのが、怪物の首領に通じたものと見える。空気もないのに、なぜこっちのことばが向こうに通じたものであろうかと、三郎はふしぎに思った。が、それよりも、木曾に勝手なおしゃべりさせてはならないと思ったので、彼は木曾に注意をするつもりで自分の触角を木曾の方によせた。

「おい、君たち同志、勝手に話をしてはいけない」

 首領は、早くも三郎の心をみぬいて、しかりつけた。

 ああ、一体この智慧のすぐれた怪物は、一体何者なのであろうか。

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