大宇宙遠征隊

24話 中佐のおどろき

1,858字 約4分 2004年4月7日 公開

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 司令は、めがねごしに、受信紙の上に書かれてある文字をひろう。

 その文は、次のようなものであった。

 偵察者213報告――火星人の月世界派遣隊により火星本国に向けて発せられた通信によると、その派遣隊は、地球人類の乗っている噴行艇一隻が月世界についたのを見た。また、その噴行艇の乗組員であるところの二名の日本人を捕虜にして、只今取調べ中である。なお、その噴行艇との間にはまだ戦いは始まっていない。

 司令大竹中将の太い(まゆ)が、ぴくんとうごいた。

「ふーん、これは容易ならぬニュースではないか。のう、幕僚長」

 司令は、そういって、机の前に立っている幕僚長の顔を見上げた。

「はい、はなはだ容易ならぬことでございます」

「月世界に、火星人の先遣隊(せんけんたい)がいっていたなどとは、わしは知らなかった。これは本当かな」

「は、月世界に不時着しましたアシビキ号に対し、只今連絡中でございますから、もうしばらくおまちねがいたいものです。しかし今迄の報告では、月世界は昔のとおりの無人の境地だと書いて居りました。もし偵察者213の報告が正しいものとすれば、容易ならぬことであります」

「そうか。早くアシビキ号の辻中佐を呼びだしてもらいたいものじゃ。二名の日本人が、火星人につかまえられたというが、どうしてつかまえられたものじゃろうか。一体、そいつは誰と誰なのか、それも早く知りたいものじゃな」

「は、ごもっともです」

「もし火星人と戦いを始めるようなことになれば、こっちは捕虜になっている者が二人もあるわけだから、相当こっちは不利じゃね」

「は、さようでございます」

「辻中佐の豪胆なることについては、わしも知らないわけではないが、そういう不利な態勢でもって、思いがけなく火星人と月世界の上で戦うのでは、ずいぶんとやりにくかろう」

 司令は、辻中佐のため、かなり心をいためているようすである。

 ああ火星人!

 火星人が、月世界の上で二名の日本人を捕虜にしたといっているが、そうすると、その日本人というのは、風間三郎少年と、その仲よしの木曾九万一少年とのことではあるまいか。

 多分それにちがいはなかろう。

 すると、二少年をとりかこんでいるあの甲虫(かぶとむし)ともペンギン鳥ともつかない怪物こそ、これぞ外ならぬ火星人なのだ!

 おお何という奇怪な火星人のすがたよ!

 なぜ火星人は、まるで鳥のような形をしているのであろうか。ふくろうのような大きな目を光らせているのであろうか。なぜ、あのような細い脚をしているのであろうか。あの(はね)のようなものはほんとうに翅なのであろうか。

 いちいち考えていくと、いちいちふしぎに思われることばかりである。

 一体火星には生物(いきもの)がすんでいるらしいことはわかっていたが、それがどんな形のものか、知られていなかった。だから今度はじめて火星人の姿がわかったわけである。二少年こそ、はじめて火星人を見た地球人間である。

 もし今、二少年にむかい、お前たちの目の前に立っている怪物こそは火星人だぞと、そっと耳うちをしておしえてやっても、彼らは多分それを信じないであろう。なぜならば、彼らは日頃から火星人もやはり地球人間と同じように、手もあり足もあって、人体と同じ形をしているだろうと考えていたからである。

 司令艇からは、すぐさまこのことが、月世界に不時着中のアシビキ号に向けて、無電でもって知らされた。

 この知らせをうけとった、アシビキ号の艇長辻中佐のおどろきは、大きかった。

「おい、火星人がこの附近にいると、司令艇から知らせがあったのだ」

「ええっ、火星人がこの月世界に……」

「そうなんだ。しかも、この火星人のために、日本人が二人捕虜になっているというが、誰と誰だろうか」

「日本人が二人? はてな、誰でしょうか。では、すぐ点呼(てんこ)をしてみましょう」

「それがいい」

 辻中佐の命令で、非常呼集が行われた。

 乗組員一同は、なにごとであろうかとおどろいて、仕事をそのままにして噴行艇内にかけこんだ。

 点呼は行われた。たしかに二人()りない。それはもちろん風間少年と木曾少年の二人であった。

「ふーむ、艇夫少年二名が、火星人の捕虜になったのか、こいつは厄介(やっかい)なことが出来た」

 艇長辻中佐は、うれいをおびた面持(おももち)で、一同の前に立ち、アシビキ号の乗組員一同に対して司令艇から通知のあったようすをはじめて知らせたのであった。

「なに、火星人が、この月世界にいたのですか。それは意外だ」

「アシビキ号が、不時着で修理中のところをねらって火星人は一あばれする気だな」

 乗組員たちは、(こぶし)を固めて、艇の外をにらんだ。

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