8話 地球が見える
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艇長は、例の器用な手つきで、テレビジョン装置についている五つの目盛盤をしきりに合わしていたが、やがて小さなスイッチをぽんといれると、映写幕がぱっとあかるくなった。
映写幕は、約一メートル平方の大きさであった。そのうえに、なんだか銀色にかがやく櫛のようなものがあった。
艇長は、それをみながら、また更に目盛盤を、うごかした。すると、映写幕のうえの像が急にはっきりしてきた。
「ほら、うまく出てきた。これが地球の夜明けだ。いや、夜明けは、この端のところだけで、きらきら光っているところは、もうすっかり朝になっている」
「えっ、地球が見えているんですか、なんだか銀の櫛みたいだなあ」
「よく見なさい。まっ黒な宇宙を丸く区切って、ここに地球の輪廓が見える」
なるほど、それはたしかに見える。西瓜を二倍大にひきのばしたくらいの大きさであった。
「分ったかね。これが、われわれのうしろにとおざかっていく地球だ。地球が、今日は満月のように丸く輝いてみえるのだ。ほら、どんどん輝いている面積が広くなっていく」
どういうわけか、どんどんひろがっていくのであった。それは、地球の重力がとどかない遠方に、この噴行艇が出てしまったために、それで地球が早く廻って見えるのだと、あとで分った。
輝く地球は、全くものすごい。ながく見ていると、身体がさむくなってくるような感じであった。
「見ていると、身体が、ぞくぞくしてきますね」
三郎は、いつわりのない感想をのべた。
「ああ、もうずいぶん遠く離れたという感じだねえ」
艇長は、距離のことを考えている。
「月は、どのくらいに見えますか」
「そうだねえ。月がこの噴行艇のそばへ廻ってくれば、これよりももっと大きく見えるはずだよ。おい艇夫。コーヒーが、ぷうぷうふいているじゃないか」
「あっ、コーヒーのことを忘れていた」
三郎は、大いそぎで、コーヒーのところへとってかえした。
「ああっ、少しで、コーヒーをまたやりそこなうところでした」
三郎は、卓子のうえで、コーヒーを注いで出した。
艇長は、テレビジョン装置のスイッチを切って、壁を元どおりにし、コーヒーをのむために卓子についた。
「ほう、これはよくわいている。あちち」
艇長は、コーヒー茶碗のふちで、口をやいたので、あわててそれをがちゃんと下においた。そのありさまがとてもおかしかったが、三郎はふきだすのをがまんした。艇長さんのことを、あまり笑うものではないからである。
「こんな宇宙のまん中で、コーヒーがのめるなんて、ありがたいことだ」
艇長は、コーヒーをふきながら、ひまつぶしにそんなことをいった。コーヒーは、なかなかさめなかった。
そのときであった。噴行艇は、ものすごい音をたてて震動した。今にも、艇はばらばらに壊れそうなくらいに、がんがんびしびしと鳴りだした。
「やっ、どうした?」
艇長が立ち上るのと、非常電話器から、当直長のこえがとびだすのと、同時であった。
「艇長。非常報告。只今本艇に向けて、宇宙塵が雹のように襲来しました。損害調査中です」
宇宙塵? 宇宙塵とは、何であろうか。