3話 中村仲蔵(3)
読み方を変える
=(F・I)附近の道
大吉と半次歩いて居る。
半次が、
T「どうやら向いの
雪枝さん、先生に
気があるらしい」
大吉聞き咎めて、半次の方振り向く。
半次、へへへと意味深長な笑。
大吉苦笑して、
T「俺の鼻の下、も少し
長かったら、或いは
そんな言葉に
有頂天になったかも
知れぬ」
「エッ?」と半次の意外そうな顔。
大吉、半次には構わず黙々として歩く。
半次も黙って歩く。
大吉、やがて、
T「女…………か」
どうやら彼はおきよの事想い出したらしい。
半次も悪い事言ったと思った。
大吉の独り言。
T「俺がおきよに
恋したのは
命懸けだった!」
遂に昔の古傷に触れた。
T「女と云う奴
命懸けで恋する事
知らぬ」
と半次の方振り返って、
T「親分の想って
居る女だってそうだ」
半次「あのお光とか云う女」
大吉が、
T「親分の口説き方は
なってない」
半次が「何故?」と問えば、
大吉、
T「俺だったら、長刀
抜いて嚇しつける」
「ホー」と半次が感心する。
大吉再び言った。
T「女と云う奴
命懸けで
恋する事知らぬ」
何だか二人の間湿ッぽくなった時、
バタバタと二三人の人が慌ただしく二人を追い越して走る。
大吉立ち止って前方凝ッと見て居たが、半次の方振り向いて、
T「喧嘩らしい」
ズカズカと走って、
群集掻き分け前へ出て、
立ち廻りして居る武士達の中へ進み出て、
一人の方の武士を背後にかばって仁王立ち。
T「友人の誼
助太刀致す!」
長刀ズラリと引ッこ抜く。(F・O)
=(F・I)五郎蔵の家
五郎蔵が、長火鉢の前で煙草吹かして居ると、児分の甲、慌ただしく帰って来て、
五郎蔵に向い、
T「親分!
いい事、聞いて
来ました」
と五郎蔵の傍へ寄ってポシャポシャ。
五郎蔵聞いて「そうかよしッ!」
T「仲蔵を
ブッタ斬るんだ!」
と力強く叫んで、
T「今夜
柳島の妙見で――」
と言って会心の笑を浮べた。(F・O)
其の夜の
柳島妙見――
=(F・I)柳島の妙見の附近
嘉助老人と雪枝が物蔭で仲蔵の通りかかるのを待って居る。
駕籠が来る――
雪枝が見止めて「アアあれ」と指さす。
老人も「そうじゃ」と云う。
駕籠は二人の近くでとまった。
仲蔵が出て来て駕籠屋に待って居て下さいと云って置いて、
二人の前を通り過ぎた。
嘉助は声掛けんとしてよう呼びかけ得ぬ。
その間に仲蔵は妙見の境内へ。
二人も後からソッと従う。
=境内――
仲蔵が通り過ぎる背後から嘉助老人思い切って、
「アもし」
仲蔵、訝しそうに振り返ると、
老人が、
T「仲蔵殿とやら
申されぬか?」
と云って雪枝と嘉助、按じる様に仲蔵見た。
仲蔵「ハイ、私奴が仲蔵で……」
嘉助「オオ」
T「矢ッ張り………」
と狂喜の如く仲蔵の傍へ。
訳の分らぬ仲蔵、少し後退する。
其の時、突然、
T「仲蔵、待て!」
ハッと仲蔵や嘉助や雪枝が其の方見れば、
五郎蔵始め、一味の奴が現れた。
驚く仲蔵。
五郎蔵が、
T「黙って居りゃ
いい気になって
よくも俺達の面に
泥塗って呉れた」
逃げんとする仲蔵の襟がみとって引き戻す。
雪枝も驚いたが、
嘉助老人スワとばかり、
五郎蔵をドンと突いて仲蔵を背後に庇って刀に手を掛けた。
五郎蔵怒った。
T「老耄れ
邪魔すな!」
ソレッとばかり一同は嘉助と仲蔵に討って掛かる。
ハラハラする雪枝。
立廻り若干。
仲蔵は逃げる。二三人は後追う。
続いて追わんとする奴等を防ぐ嘉助。
=附近――元の場所
逃げて来た仲蔵は、其処に待って居た駕籠に乗る。追って来た児分、駕籠の棒掴む。
と、其の時、バタバタと駈けて来た武士。日下部典六である。
=境内
嘉助は五郎蔵の一太刀、肩先に受けアッと言って倒れる。
驚く雪枝。
父の死体に取り縋ったが流石は武士の娘、父の太刀握って五郎蔵の背後から斬りつけたが、刀落され、弱腰ドウと蹴られて倒れた。
五郎蔵が、
T「娘さん
俺の所為じゃ無えぜ」
「馬鹿な事しちゃ困る」と云って、
T「恨むんなら
先生を恨みな
此村大吉をな」
と言い残して仲蔵の方へ行かんとした時、
児分連、典六に追われて逃げて来た。
典六追って来て身構える。
雪枝は父に取り縋って泣く。
五郎蔵、相手が悪いと見て「逃げろ」とばかり一同散ずる。
典六見送ってせせら笑い、フト雪枝に気附く。
今、嘉助老人断末魔。
T「仲蔵……」
声段々細って遂にガックリなる。
ワッと泣き伏す雪枝の姿。
凝ッと見つめた典六の面に嫌な笑が浮んだ。
(F・O)
=(F・I)五郎蔵の家
長火鉢の前に坐って、御機嫌斜めの五郎蔵親分ブリブリ怒って居る。
次の室で、
捕われのお光――冷笑浮べて居る。
長火鉢の前。
五郎蔵、次の室のお光の事思うとムカついてならぬ。
児分の甲がソッと五郎蔵の傍へよる。
五郎蔵が「何か用か」と問えば、
児分甲が、
T「親分、こうなりゃ
一層の事、日下部典六
とグルになっちゃ
どうですい?」
五郎蔵の「そんな事出来るかい」と云った顔。
児分甲が会心の笑。
T「典六は親分が憎くて
仲蔵に味方するんじゃ
ないんでしょう」
五郎蔵、成る程と頷く。
甲は、
T「典六の喧嘩の相手は
此村大吉」
「そうでしょう親分」
T「だから、典六と
グルになって仲蔵の奴を
殺し、其の代り
大吉の方も親分が
何とか骨折って……」
聞いて居た五郎蔵、何か思い当る事あるらしくポンと膝を叩いて「成る程、それがいい」
(F・O)
一夜の中に父を失い
独りぼっちの雪枝の
家へ日下部典六が
訪れて来たのは
その翌る日の事
=(F・I)嘉助の家(夜)
俗名物部嘉助の位牌の前。
訪れて来た日下部典六が、雪枝に何か話して居る。
親を失った非嘆の涙、乾き切れぬ雪枝が哀れな姿。
典六が一膝進めて、
T「何と言っても
相手は音に聞えた
此村大吉」
「とても女の腕に立つ筈が厶らん」と云って、
T「御見受け申す所
他に縁者とて
厶らぬ御様子」
と言われて雪枝はやる瀬なさそうに見える。
此処ぞと典六、
T「身共も武士
次第に依っては
御助勢致す」
エッと喜んで雪枝、典六を見る。
典六「御助勢申すとも」
雪枝「有難う存じます」と其の場に嬉し泣きに泣き伏す。
典六ニヤニヤ笑い出した。辺りを見廻し雪枝の肩に手を掛けて、
T「御助勢致す
その代り……」
と言ってギュッと雪枝を抱き締めんとする。
アッと驚いて振り払う雪枝。
段々獣的になる典六の顔。
雪枝に不安の色。
典六の手振り放して跣足の儘表へ――
典六も後から、
=家の前(長屋)
半次の家の表を大吉開けんとしたが鍵がかかって開かぬ。「留守らしい」と思った時、
雪枝が吾が家から飛び出して来た。
続いて典六も。
大吉、女を庇って立った。
典六、怒って、
T「日下部典六と知って
手向うか?」
大吉聞いて、
T「ナニ、典六?」
半次から聞いた話思い出してニッコリした。
雪枝に逃げろと言う。
典六ウヌと抜刀する。
雪枝去る。
大吉と典六の立廻り若干――
結局、サンザンな目に遭った典六、其の場におさえつけられた。
大吉、典六の刀ぎ取って、突きつける。
典六、命許りは……と頼む。
大吉、せせら笑う。
T「怖いのなら
怖う厶いますと
双手をついて
詫びて行け」
「エッ」と典六不思議そうな顔。
大吉、
T「さすれば
命だけは助けてやる」
と云われて典六「さては半次」と立ち上らんとするが、
大吉に刀突き付けられ、
仕方なく両手をついて詫びる。
大吉大笑して刀を投げてやる。
それを拾って、コソコソと逃げる典六。
後見送る大吉の側へ雪枝が来て礼を述べる。
大吉、凝ッと礼を言って居る雪枝の顔見て居る。(F・O)
=(F・I)夜の町
惨々な目に遭って節々の痛みに足を引き摺り乍ら帰って来る典六。
物蔭から五郎蔵が出て来て呼び止める。
振り返った典六「オオ、五郎蔵」と身構える。
五郎蔵が「まァまァ」ととどめ、
典六、不思議そうにするのを、
五郎蔵が「話が厶りますれば」と心易く典六に近附く。(F・O)
=(F・I)物部の家
相当の時間が経過した後らしく、大吉と雪枝は親しげに話して居る。
兼ねてより心に恋い焦れし男、前にして雪枝の面は嬉しさ包みきれぬ。
大吉は真面目くさって、
T「すると、其の
此村大吉と云う奴が
御身の父御の敵」
「成る程」と仔細らしく打ちうなずき、
T「なれば、身共
喜んで、御身に
助太刀仕まつろう」
雪枝「まァ」と喜んだが思い返し、「イエイエ
T「その大吉とやらは
稀に見る武芸達者
との事に厶りますれば」
と言うを大吉が「イヤイヤ
T「譬え、身共が一命
其奴の為に捨て
申そうとも」
意外の言葉! 雪枝が「何と仰しゃいます?」
大吉、
T「御身の為なら……」
雪枝の声が震えて来た。
T「わたくしの為なら?」
大吉が情熱的な声で、
T「御身の為になら
身共喜んで
一命捨て申す」
大吉の此の言葉は雪枝を歓喜の絶頂に押しやった。感極まってワッと泣き伏す。
大吉慌てて「どうなされた」と雪枝を宥める。
雪枝、暫く泣いていたが、涙の顔上げて、
T「わたくし
ウウ嬉しゅうて……」
後は声無く又、大吉の膝に泣き伏した。
その姿見下ろす大吉の顔に一種残酷な、所謂悪魔的な微笑と云う奴が浮んだ。(F・O)
=(F・I)五郎蔵の家
日下部典六を上席に五郎蔵と児分甲が酒飲んで居る。
室の隅の方に捕われのお光の姿、不安そうに三人の方見て居る。
典六が「よし心得た」と五郎蔵に、
T「では、明日芝居が
果てたら仲蔵を
柳島の妙見へ
誘き出そう」
お光の驚き!
五郎蔵、ニヤッと笑ってお光を見る。
お光、気強くツンと横向いたが流石に涙ぐんで居る。
五郎蔵が今度は典六に、
T「じゃわっしは
馴染みの町与力に
頼んでお上の手で
大吉の野郎を……」
と言えば典六「お頼み申す」
お光は独り不安な顔。(F・O)
一夜が明けた――
=(F・I)長屋の朝
半次が我が家から出て来た。一つ大きな欠伸する。雪枝は自分の家の表にボンヤリ立っています。
何か物想いに沈んでる。
半次が独り言。
T「先生、昨夜
何処へ行ったんかね?」
其の声に雪枝フト半次に気附く。
半次尚も独り言。
T「親分の家へも
帰らなかったと云うし」
聞いた雪枝、何か言わんとしたが幾度か躇したが遂に思い切って「若し」
「何です?」と半次。
雪枝、言いにくそうに、
T「柏木先生なら
たった今、親分の
処へと仰有って……」
半次が不審そうに、
T「柏木先生……?
と云うんじゃ
ないでしょう」
雪枝も不審そうに、
T「確か昨夜
柏木と仰有ったが」
聞いた半次愈々訳分らぬ。
雪枝が、
T「何時も貴方と
御一緒の……」
「こんな頭で、こんな顔の」雪枝が言えば、
半次「そうそう
T「あの先生なら
此村大吉」
ゲーッ? と雪枝の驚愕。
T「ココ此村……」
殴られた様にフラフラと我が家の入口に凭れる。
半次、愈々不審そうな顔。
雪枝耐らなく、サッと家の中へ入る。
半次、後にのこって感心する。
T「何とかかんとか
言ってて先生
早い事……」
「早い事いっちまったんかな」と言い乍ら半次は去る。
=家の内部
位牌の前に泣き崩れた雪枝。
T「知らなかった
知らなかった」
泣の眼で父の位牌に、
T「お許し下さいませ
お父上様」
生ける者に言うが如く、
T「雪枝は
雪枝は不孝者
で厶ります」
果は自分を叱る様に、
T「憎い敵とも知らず
身も心も捧げた
雪枝の愚かさを
お叱り下さいませ」
決心した物の如く、
T「お詫びは……
お詫びは
きっと致します!」
と叫んで又其の場に泣き伏した。
(F・O)
=(F・I)道――
大吉がブラブラ来る。後から叫ぶ声に振り返ると半次が駈けて来た。追い付いて、
二人並んで歩き出す。
半次が先刻の事思い出した「先生!」
「何だ?」と大吉。
半次、
T「先生、昨夜
何処へ行ってました」
大吉、一寸微笑んで、
T「昨夜か?」
無表情に簡単に、面白くなさそうに、
T「昨夜は面白かった」
半次は、大吉の答えが余り呆気ないので、
T「面白かった?」
と意外そうに問い返せば、
大吉依然として一向面白くなさそうに「ウン
T「面白かった」
半次が再び問う。
T「それだけ
ですかい?」
大吉が微苦笑浮べて、
T「昨日の事は
昨日の事サ」
と言って黙って了う。半次ももう問わない。
と前方に当って群集がワイワイ。
一人の浪人者と、二人の若い旅侍の果し合い。
大吉、半次を振り返り、
T「喧嘩らしい」
とズカズカと群衆の方へ。
今しも浪人者は若侍の一太刀受けてあッと倒れる。
其処へ大吉、飛び出して来て、
T「友人の誼
助太刀致す!」
長刀ズラリ引ッこ抜く。
二人の旅侍何か言わんとしたが、その隙を与えずに大吉は斬り込んで行く。
半次見ている。
二人相手に大吉の立廻り若干。
とど、二人共に一太刀ずつ浴びてドウと倒れた。
大吉笑い乍ら血刀拭う。
虫の息の三人。と旅侍二人の中の一人が突然刀を杖にヨロヨロと立ち上り、
大吉「未だ来るか!」と身構えると、
其の侍は大吉には眼も呉れず、這う様にして先に倒した浪人の傍へ寄り、苦しい声で、
T「父の……
カッカッ」
と叫んでとどめ刺さんと大刀振り上げたが力尽きてバッタリ倒れた。けれど尚起きんと努力する。
大吉、じーと其の侍見下して居た。動かない。
やがて静かに頭上げた。
T「敵討ちか」
悲痛な面で呟きました。そしてフラフラ歩き出す。(F・O)
其の夜が更けて
柳島の妙見では――
=(F・I)柳島の妙見
五郎蔵一味の日下部典六の一党が集合して居る。五郎蔵が典六に、
T「わッしの家から
縄付きを出したくは
ありませんから
役人に半次の家に
張り込んでる様
言って置きました」
「左様か」と典六。五郎蔵、
T「あの野郎、日に一度
はきっと半次の家へ
行きますから
行ったが最後」
「一ぺんにフン縛られます」てな事言って居ます。(F・O)
今朝の旅侍の事が
大吉の頭から
何うしても
離れない
=(F・I)五郎蔵の家
皆出て行って、ガランとして居る室の片隅に只一人坐して考えに沈む大吉。
半次は長火鉢の前で、之も黙って煙草吹かして居る。
行燈の灯、淋し。
大吉の心愈々重い。
と、襖慌ただしく開いて留守番の児分、
T「大変だ!
お光が……」
半次何事ならんと児分と共に次室へ、
大吉、眼の玉一つ動かさず、まだ何事か考えて居る。
=次室
舌噛んで死んだお光。
半次と児分お光を抱えて呆然。
美しき、余りにも美しきお光の死顔。
(O・L)
=元の室
大吉尚沈んで居る。と暫時して半次がニューと首出した。
T「お光は
舌噛みましたよ」
大吉ガクリと項垂れた。半次が尚、
T「あの女は命懸けで
惚れてましたね」
その言葉に大吉ギクとした。スックと立ち上る。
半次、慌てて問うた。
T「何処へ?」
大吉振り返る事もせずに、
T「昨日の女の事
気にかかる」
と言い残して其の儘スーと去る。
半次も続いて立ち上った。(F・O)
=(F・I)長屋
張り込んで居る役人大勢。
見張りの者が、ソレ来たと合図した。
一同バラバラと四散する、或る者は半次の家の中へ隠れる。
其処へ駈けて来た大吉と半次、雪枝の家の中へ飛び込む。
=家の内部――
大吉中へ入ったが誰も居ない様子。
座敷へ上って――
次の室の襖ガラリ開いて二人共アッと叫んだ。
父の位牌の前に喉突いて倒れて居る雪枝。
大吉驚いて彼女を抱き上げ、
T「どうしたと
云うのだ?」
と雪枝の耳許で叫ぶ。
雪枝フト気附いて大吉を見「おお貴方は……」
大吉「どうした?」と聞く。
雪枝苦しげに、
T「仲蔵を……」
大吉「確っかりしろ!」雪枝尚も、
T「兄さんを……」
「何?」と大吉、雪枝必死に声を絞って、
T「タッ、タッ頼みます!」
と云ってガックリなる。大吉暫時雪枝の名を呼んだが遂に息絶えたと知ると静かに其処に寝かし、今更後悔の念に絶えず、
T「心得た!
仲蔵は、拙者が
親分に頼んで
きっと無事に
舞台へ立たせてやる」
と言ってスックと立ち上る。「半次行こう」と今しも大吉、
表の戸開けた時「御用」と一人の役人うって来る。
大吉其奴を蹴り倒し、ピシャリ戸を閉めて、
T「人違いすな
此村大吉、御用と
呼ばれる覚えない」
と外の役人の一人が、
T「五郎蔵の訴えにより
罪状明白じゃ
神妙にしろ!」
聞いた内部の二人、
T「ナニ五郎蔵?」
大吉、ウヌ――サテハと白眼むいて怒った時!
櫓に芝居の果てを知らせる太鼓が鳴り響く。
大吉、オーと叫んだ。
T「南無三
芝居が果てた!」
「時遅れては」と半次、次に大吉、ドッと表へ飛び出した。
=道――
駕籠が一丁走って居る。
中には仲蔵が乗って居る。
=他の道――
逃げる大吉と半次、追う役人との立廻り。
(両者カットバック適当に)
=柳島の妙見――
見張の児分「来た!」と手を上げた。
ソレと用意する一同。
其処へ駕籠が到着する。
バラリ取り囲む一同。
=道――大吉と半次の立廻り
半次が一人踏み止まり、大吉は逃げる。
半次の立廻り――(捕えられるなと殺されるなと其処所よろしく)。
=妙見――
仲蔵を囲んで一同刀突きつける。
生きた心地せぬ仲蔵。
五郎蔵、大刀振り上げてキッと斬り下す。
=道
走って来た大吉の手に
捕縄が掛ったので、
大吉引き戻されてバッタリ倒れた!
=妙見
仲蔵、五郎蔵の刃を逃れて、逃げ出さんとする。
一同「ドッコイやらぬ」と立廻り――
=道――
大吉、縄持ってた奴をズバリ斬って、
其処に現れた数名の捕吏と立廻り。
=妙見――
仲蔵、バッタリ倒れる。
児分の連中、仲蔵の両手両足おさえる。
=道――
大吉、捕吏を倒して走る。
=妙見
倒れている仲蔵。
その上で太刀逆手に振り上げる五郎蔵。
=道――
走る大吉。
=妙見――
五郎蔵、グサッと太刀突き下す。
走る大吉。
五郎蔵の刀は仲蔵の首とスレスレに土に突き刺さされている。抜かんとするが中々抜けぬ。走る大吉――
五郎蔵、刀を土から抜いて又振り上げた。駈け付けた大吉!
児分の間駈け抜けて、五郎蔵の傍へ寄り、五郎蔵をドンと突く。
日下部「オオ大吉」と叫ぶ。
大吉、仲蔵を抱えて身構え乍らジリ退る。
一同大吉を取り囲む。
大吉、仲蔵を連れて突然走る。
一同後追うと、
大吉は仲蔵を境内の安全な場所へ置き、再び戻って来た。
典六と五郎蔵「おのれ大吉」
大吉、笑い乍ら、
T「長い事
待ったろうなァ?」
エッ? と呆気にとられた二人。
大吉は、
T「主役が来なくちゃ
幕も開けられまい」
と云って「サアサア
T「此村大吉、登場した
愚図々々せずと
幕開けろい?」
訳の分らぬ二人始め児分。
大吉が怒鳴る。
T「幕開けろと云ったら
開けねえか?」
愈々面喰う一同。
大吉「よーし
T「汝等、よう開けぬ
のなら、俺が
斬って落すぞ」
と叫んで太刀大上段に振り上げ、
T「此村大吉が
柳島の妙見に
一大乱闘の幕
切って落すぞ」
と叫んで一同の中へ斬り込む。
一大殺陣の開始となる――
遂に典六も五郎蔵も倒されたが、
大吉も肩先深く斬られてしまった。
仲蔵が恐る恐る出て来た。
大吉「おう仲蔵か」
仲蔵、恐る恐る「はい」と答える。
大吉が、
T「仲蔵!
貴様、武士の切腹
見た事あるまい」
と言う。
仲蔵「ハイ見た事厶りませぬ」
大吉、微笑んで、
T「今見せてやる
よッく見て置け!」
エッと驚く仲蔵。
大吉、太刀逆手にグサッと横腹を……
(急速なるF・O)
=(F・I)芝居小屋
花道をダダッと駈け出た仲蔵の定九郎。
七三でグッと極った時。(F・O)