仮面の恐怖王

23話 落盤

2,408字 約5分 2018年1月15日 公開

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 とつぜん、ザーッという音が、どこからか聞こえてきたかと思うと、ふたりの頭の上から、やわらかくなった土が、バラバラと夕立のようにふりそそいできました。

 とっさに、小林君は、ゴリラが手で土をすくって、ふたりにぶっかけているのではないかと思いましたが、そうではありません。もっとおそろしいことだったのです。そのとき、あなの中に大異変がおこったのです。

 ゴーッと、地ひびきのような音が聞こえてきました。そして、やにわに、頭の上から、大きな岩や土のかたまりが、ダダーッとおちてきて、あっというまに、洞くつをすっかりふさいでしまいました。

 落盤です。鉱山のあなをほっているときに、よくおこる、あの大きな土くずれです。鉱山では、落盤のために、何人も、何十人も、生きうめになることがあります。そういう新聞記事が、よく出ているのをごぞんじでしょう。

 天地もひっくりかえるような、おそろしい音と、地ひびきがつづいたあとに、きゅうに、あたりはシーンとしずまりかえってしまいました。

 ああ、小林君たちは、とうとう土くずれの下じきになって、おしつぶされてしまったのでしょうか。

 いや、そうではなさそうです。すくなくとも、すばしっこいポケット小僧だけは生きていました。かれは、おそろしいもの音がおこると、パッと、あなのおくへ身をかわして、たすかったのです。

 ポケット小僧も、小林団長のことがしんぱいでした。さっき、土くずれの音にまじって、なんともいえない、ものすごいさけび声が聞こえました。それは人間とも動物ともわけのわからない、ギャーッというようなさけび声でした。もし、あれが小林団長のさいごのさけびだったとしたら……。

 ポケット小僧はいそいで懐中電灯をつけて、そのへんをてらしてみました。ああ、よかった。小林団長は土の下じきにならないで、ただたおれているだけでした。あぶないところでした。もう五十センチむこうにいたら、おしつぶされているところでした。

 しかし、たおれたまま身動きもしません。ポケット小僧は、また、しんぱいになってきました。もしや、おちてくる岩で頭をうって、死んでしまったのではないでしょうか。

 小僧は、小林君のそばへいって、口に手をあててみました。たしかに、息をしています。だいじょうぶ、命はたすかったのです。でも、ひどいけがをしているのではないでしょうか。

 小僧は、小林君をだきおこそうとしました。しかし、ポケットにはいるような小さな子どもですから、なかなか、だきおこせません。苦心をして、いろいろやっているうちに、小林君が目をひらきました。

「あっ、ぼく、気をうしなっていたのかい。」

「うん、そうだよ。けがはしなかった?」

 小林君は、からだじゅうを、さすってみました。

「なんともないよ。なにかで頭をうったのかな。」

「おやっ、ひたいから血が出ているよ。」

「うん、そうだ。ここをうったんだ。それで、気がとおくなったんだよ。」

 小林君はハンカチを出して、きずをおさえていましたが、ふと、しんぱいそうな顔になって、

「ぼく、どのくらい気をうしなっていた?」

「ちょっとだよ。一分ぐらいだよ。」

「それじゃあ、落盤があってから、時間はたっていないのだね。で、あいつはどうしたんだい。」

「あいつって?」

「きまってるじゃあないか。ゴリラだよ。」

「ああ、あいつかあ。あいつね、土がおちたとき、すごいさけび声をたてたよ。でも、ぼくたちのかくれていた土の山より、ずっとむこうにいたから、うまく逃げたかもしれないよ。あっ、小林さん、ぼくたち、たすかったね。土がくずれて、道がとまってしまって、あいつ、こっちへこられなくなったからね。」

 ポケット小僧は、よろこびましたが、ふたりは、ほんとうにたすかったのでしょうか。ゴリラより、もっとおそろしいことが、待ちかまえているのではないでしょうか。

「とにかく、こっちからは出られないのだから、おくへはいっていくほかはない。おくへいけば、どっかで道がもとにもどって、あなの外へ出られるかもしれない。」

 そこで、ふたりとも懐中電灯をつけて、それをふりてらしながら、あなのおくへすすんでいきました。そして二十メートルも歩いたときです。

「あっ、いけないっ。こっちも土がくずれている。」

 小林君がさけびました。

 あながいきどまりのように、土でふさがれていました。ふるい落盤らしく土がかわいています。柱や横木がくさっているので、ほうぼうに、こんな落盤があるのかもしれません。

 洞くつの両方がふさがっているのですから、二少年は二十メートルほどの長さのあなの中に、とじこめられてしまったわけです。

 もう、たすかるみこみはありません。

「おれたち、そのうちに、息ができなくなるんじゃないだろうか。」

 ポケット小僧は、はやくも、そこに気がついて、心ぼそそうにいいました。

 そうです。二十メートルあるといっても、せまいあなの中です。やがて空気の中の酸素がなくなってしまったら、ふたりは、このまっくらな地の底で死ななければなりません。

「だいじょうぶだよ。懐中電灯の電池がきれるよりは、ながくもつよ。そのあいだに、ぼくたちは頭をしぼって考えるんだ。」

 小林君が、ポケット小僧を安心させるようにいいました。

「おれたち、この土をほって、外へもぐりでるよりないね。」

「うん、だが、いまの落盤は、だめだよ。水でグショグショになっているから、いくらほっても、上から土がおちてくるばかりだからね。うっかりすると、第二の落盤がおこるかもしれない。そして、こんどこそ、ぼくたち、うずまってしまうかもしれないんだぜ。」

「そうだなあ。こまったなあ。」

 ポケット小僧は小さな腕をくんで、さもこまったように、首をふるのでした。

 ああ、いったい、ふたりの運命はどうなるのでしょう。小林君の頭に、なにかうまい考えがうかぶでしょうか。(もし、うかばなかったら……。)

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