三太郎の日記 第一

45話 三太郎の日記 4

250字 約1分 2011年8月12日 公開

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 余が急遽に死の手に奪ひ去られたとする。余の死後に此日記が殘つたとする。此日記を讀んで、余が唯死に對する不安恐怖の念にのみ滿されて、何等安立の地を得なかつたことを發見する時、余を愛する者の悲哀は實に絶大にして、全く慰藉の途なきを覺えるであらう。併し後人に殘す悲哀が如何に絶大であつても此事は事實である。余は死に對する不安と動亂とに滿ちて死んだのである。死に對する諦めもなく、死後の生活に對する光明もなく、みじめに力なく死んだのである――若し死の瞬間に奇蹟的の經驗が起つて余の精神を靈化するに非ざれば。

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