三太郎の日記 第一

7話 三太郎の日記 3

390字 約1分 2011年8月12日 公開

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 自分にとつて興味ある對話の題目は唯自己と自己に屬するものとである。併し此題目は他人にとつて死ぬ程退屈なものであらう。又他人にとつて興味ある對話の題目は唯其人と其人に屬するものゝみである。併し他人にとつて興味ある對話は自分にとつて死ぬ程退屈なことである。故に吾人が他人と對話して非常に面白かつた場合には、自分の對手に與へた印象は甚だ惡かつたものと覺悟せねばならぬ。又對手に與へる印象をよくする爲には吾人は非常な退屈を忍ばねばならぬ。兩者半々ならば其人の經驗は甚だ幸福なる經驗である…………

 レオパルヂは覺え帳にかう云ふ意味の言葉を書いた。此言葉を書いた時レオパルヂの唇には苦い、淋しい微笑が浮んだであらう。この苦い、淋しい微笑が此の如き蛇の言葉の生命である。處世の哲學を説く商業道徳の講師の樣に、ニコリともせずに此の如き言葉を發する者は一面に於て卑俗である、一面に於て痴愚である。

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