地球発狂事件

2話 稀代の怪事

806字 約2分 2000年2月2日 公開

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 そのままで何事もなかったなら、おそらくドレゴは昼前頃までぐっすりと眠り込んだことであろう。

 ところがドレゴは思い懸けない出来事のため、それから一時間ばかり後に、一度目をさまさなければならなかった。

 泥のように熟睡していたドレゴをほんの数秒の間なりとも目を覚まさせ、むっくり寝台の上に起上らせるという力を発揮したものは、相当のものであった。ドレゴは(おどろ)いて目をさましたのだ、そして重い瞼を懸命に開いて、何か大きな音のした方を見廻したのであった。分かった。寝台と反対側の壁にかけてあった聖母マリヤの額像が半分に千切(ちぎ)れ、上半分だけが壁にぶら下ってまだぶらぶらしていた。下半分は絨氈(じゅうたん)の上に散らばって落ちているようであった。

「ちぇっ、うるせいぞ」

 半睡半醒の状態にあったドレゴは如何なるわけにて不思議にもマリヤの額縁が半分に叩き壊されて落ちたのかを探求する慾も起らず、物音のしたわけだけを了解すると安心してそのまま再び寝台の上にぶっ倒れて睡ってしまったのである。

 それから二時間ばかり経った。

 ドレゴは再び目をさまさなければならなくなった。それは異様な血みどろの悪魔が、彼を包んでしまってその恐ろしさと苦しさにどうしても目をさまさずにいられなかったのである。

「ああ――っ、夢だったのか……」

 ドレゴは、完全に目をさまして、寝台の上に半身を起こした。彼は沙漠を旅行した者のように、疲れ切っている自分を発見した。それから下腹が今にも破れそうに(ふく)らんでいるのに気がついた。いや、もう一つ、顔の左半面が妙にひきつっている。

 彼は手をそこにやってみた。指先にかさかさしたものが触った。何だろうと、手を引いて見ると、それは赤黒い血の固まりであった。彼はびっくりして顔から頭へかけて手で()でまわした。ぴりりと痛むところが一箇所みつかった。それは左のこめかみの少し上にあたるところで、毛根にがさがさするほど血らしきものがこびりついていた。

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