15話 船底からのなげき
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「本船の機関が爆破するかもしれんとは、どういうわけだッ」
事務長は棒立ちになってさけんだ。
「それは、こういうわけなんだ」
と、シリンが半泣きの声で説明するところによると、機関部では、どういうわけかわからぬが、皆がトロトロと居ねむりをしてしまったこと、それから後になって目をさましてみると、たれもかれも、ことごとく目が見えなくなっているのがわかったこと、そんなわけだから、いま機関部員は、ただ日ごろの熟練によって、目は見えないが、手さぐりによって、この精巧なクイーン・メリー号の機関をかろうじてあやつっていること、したがって、メーターもゲージもよめないので、いつまで安全に機関を運転しつづけられるかわからない、きっと、操縦はどこかに大きなむりをつくって、恐るべき機関の爆破が起こるかもわからないというのだった。
「今の今まで、わがメリー号は眼が見えない者ばかりの手で運転されていたのか。そいつは全くあきれたはなしだ」
「ねえ、事務長。どうして皆がそろいもそろって眼が見えなくなったんだろうネ」
「どうもよくわからない。実はこっちも皆、眼が見えないんだ。わたしやマルラはもちろん、船客たちも眼が見えないといってさわいでいる。しかしほんとうに眼が見えなくなったのか、それともひどい濃霧につつまれたのか、それはどっちかわからない」
「濃霧じゃないと思うね」
と、機関長シリンは反対した。
「でも、すこし、あかりは見えるような気がするんだよ。物の形はいっこうに見えないがネ。なんだかこう、豆スープの中にはいったように、まッ黄いろなあかるさを感じるんだが……」
「こっちはまっくらさ」
とシリンははきだすようにいったが、きゅうに声をふるわせて、
「――事務長、とにかくこれは大異変だよ。ぼくたちは、もう運転の自信を失ってしまったんだ。もう総辞職だ。しかも英国につかないうちに、魚の腹のなかにはいってしまうだろう、ああ」
事務長も、それをなぐさめるすべを知らなかった。でも今はろうばいしているときではない。異変があるとすれば、極力しっかり気をおちつけて、そこを切りぬける工夫をしなければならないのだ。そう思った事務長は、声をはげまして、機関長シリンをしかりつけた。
「いや、しかられてもしかたがない。しかし、ぼくはもう力がないんだ」
「力がないなんてことはないよ。きかなくなったのは、たかが眼だけのことじゃないか。ほかにまだ手もあり足もあり、脳もあれば耳もあり、鼻もある。――そうだ、きみのところは何かくさくはないか」
と、事務長はふと気がついて、れいのいやな臭気についてたずねてみた。
「くさい? いや、別になんにもくさくはないが、それがどうしたのかネ」
「なに、そっちはくさくないのか。それはふしぎだ。船室や甲板一たいには異様な臭気がただよっていて、じつにへいこうしているのだ。機関部がくさくないとは全くふしぎだ。するとこれは、やっぱり海霧につつまれているとしか思えない。だが、そのガスも尋常いちようのガスではない――」