22話 クイーン・メリー号は叫ぶ
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エバン船長が、顔をかがやかして、スミス警部の方へおりてきた。
「どうじゃネ。何か見つかったらしいが」
「ええ、船長、これをごらんなさい」
といって、さし出した布テープを見れば、その中には、英語で次のようなかんたんな文句がタイプライターでうってあった。
「SOS。この附近を探セ。クイーン・メリー号」
クイーン・メリー号からの救助文なのであった。
「ややッ、これはメリー号の通信じゃ。うむ、おどろくべき発見じゃ」
といって、エバン船長は感激の色をしめして、スミス警部の魚くさい手をぐっとにぎりしめた。
「やあ、あんたが、こうした名探偵とは、失礼ながら今の今まで、そうは思わなかった。いや全く敬服のいたりじゃ」
スミス警部は、ゆかしく笑いながら、
「とにかくこれで見ますと、メリー号の乗組員はまだ生きていると思われます。また、乗組員はなにかの災難にあって、それからのがれようとくわだてていることもわかりました。これを見ると、かれらはこの布テープに印刷をし、それをまるめた上で、何か魚のたべそうなえさの中に入れ、それを海中にまいて、魚がそのえさもろとも通信文を胃ぶくろにおさめるよう、そうすれば、そのテープがどこかで発見されるだろうと考えついたのです。こまったあげくのちえとはいえ、これは実におもしろい通信方法です」
「うむ、いや名探偵じゃ。では、さっそくこれを英本国へ通達しなければならぬ」
ただちにルゾン号の無電は、檣頭に高くはったアンテナから、
「メリー号よりすくいをもとめる云々」
と、あとからあとへとくわしい情報を打電した。
英本国では、もう絶望だと思っていたメリー号から救助信号があったというので、乗客の家族たちもハンカチーフでなみだをぬぐって元気づいた。
捜索隊への命令が発せられた。待機中の駆逐艦隊や、れいのラスキン大尉のひきいる飛行隊は、新たに潜水艦隊をつれて勇躍してふたたび大西洋上めがけて進発した。
ルゾン号の魚とり大会の参加員たちにも、魚腹から出てきたクイーン・メリー号の救助信号のことがだんだんと伝わっていったので、さおをかついで本船にかえってくる者がだんだんに多くなった。
「スミスおじさん。メリー号が見つかったって、ほんとうなの。どこにいたの」
と、三千夫少年も、カニばかりはいった魚籠をかついで、スミス警部のところへとんできた。いまや警部は船内の畏敬のまととなった。
「さあ、どこにいるのか、そいつはまだわかっていないのだよ、三千夫君。しかし今に、英国海軍がそれを教えてくれるだろうよ」
ああ、英国海軍!
そのとき何ごとが起こったのか、突如としてルゾン号の非常汽笛が鳴りひびいた。
こは何ごと、と全員はおどろいて、あるいは甲板にかけあがり、あるいは高声器の方に聞き耳をたてた。