3話 口に入らぬサケ料理
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船内はどこでもここでも、サケの話でもちきりだった。
「今晩の食卓に、さっきとれたサケを料理してつけます」
という船内アナウンスが、どの船室にもひびいたからだ。
やがて晩餐を知らせるシロホンが、ボンボンボンとなりだした。六等船客たちはその楽器の音を聞いただけで、口の中につばがわいてきてしかたがなかった。いよいよあのうまそうなサケがうんとくえるぞ。
上は特別一等船客から、下は船底に住むれいの六等船客のところまで、サケの料理は全部にゆきわたった。船員たちも、それぞれの部屋で、じぶんたちの仲間が目の前でとったサケを料理のさらの中に見出した。その魚肉の上には、つまようじにつけた小さな旗がそえてあった。その旗には字が書いてあった。指さきにつまんで読んでみると、
「われらの女王クイーン・メリー号は海上を征服し、今また海中をも征服す」
とあった。
「なんだ、これは。サケ漁を祝った文句らしいが、あまりうまい文句じゃないネ」
とひとりの船員がいった。
「うん、この文句の次に――よって、はなはだ疲れたれば、われわれはこれより海底に眠らんとす――と書いておけばいいのに」
「よせッ。海底にねむるなんて、えんぎでもない――」
三千夫少年もボーイ室に、皿に大山もりのサケ料理をもっていった。
「サケの本場はどこだか知ってるかい。知らなきゃ教えてあげよう。日本の北のほうにある漁場カムチャッカだ」
大いばりでフォークをにぎろうとしたとき、
「三千夫ボーイ、事務長のおよびだ」
と、ボーイ長がどなった。
「ちえッ、つまらないの」
三千夫は日本語でいって、いきおいよく背の高いいすからすべりおりた。
そのとき船内には、あちこちでねむそうな声が聞こえて来た。アーアと大きなあくびをする者もあった。船長は階段をのぼりながら、手すりにぶらさがってコックリコックリいねむりをしていた。ロボット操縦装置を持ったメリー号の船体だけが、一こう変らぬ全速力で、まっくらな海上を東に向かって航行していった。