4話 ルゾン号の無電報告
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「クイーン・メリー号行方不明となる!」
このおどろくべき報道が全世界に向けて放送されたとき、人々はあっとおどろきの声をはなった。
でも、なにかのまちがいではないか?
しかしそれがまちがいでないことは、それから矢つぎばやに放送される臨時ニュースの内容によってだんだん明らかになっていった。
「クイーン・メリー号に無線電話をもってよびかけたが、さらに応答がない。最後に同汽船から通信を受けとったのは午後八時二十分であった。それいらい、一通の電信も電話も、同汽船から受けとっていない」
ニューヨーク、ロンドン、パリなど、各国の都では、クイーン・メリー号の船客となった親や子供や親類や上官や友人などの身の上を案じて、汽船会社のまえは群衆で黒山のようになった。
高声器が鳴った。
「クイーン・メリー号は、不可解なる原因のため無電に故障を生じたものと思われます。当局ではただちに、海軍飛行隊に出動を命じました。ただいま偵察第十二戦隊が出発いたしました。また駆逐艦六隻も現場にむけて出発いたしました」
人々は顔を見合わせて、うちうなずいた。今に飛行機が快報を知らせてくるにちがいない。
ロンドンの汽船会社の重役室では、社長ラングレー氏が首脳部をあつめて協議を進行させていた。
「ああ、ありました。フランス汽船のルゾン号です」
と、航路部長のロイド氏が、数字のたくさん書いてある書物の上をおさえながらいった。
「おおルゾン号か。すぐ無電で問い合わせたまえ。午後八時二十分から九時の間にメリー号にすれちがったはずだが、同汽船を見たかどうか、なんでもいいから、メリー号に関する詳細を知らせてくれといってやりたまえ。もちろん、ていちょうなことばでもってな」
無電係はただちに電波を汽船会社の屋上から発射した。フランス汽船ルゾン号は、まもなく応答してきた。
「本船は予定したる時刻においてクイーン・メリー号に遭遇せず、さらにその時刻の前後においても遭遇せず。ついに船影すらもみとめざりき。海上は風やや強きも難航の程度にあらず」
果然、ルゾン号は、クイーン・メリー号と、たしかにすれちがうはずだったのに、船影さえ見なかったというのだ。
メリー号のゆくえは如何? いまごろ乗組員たちは何をしているのであろうか、サケ料理をたべそこなった三千夫少年はどうなったか。