61話 あとしまつ
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事実、クイーン・メリー号を中にはさみ、ラスキン大尉指揮の英空軍と海底超人の群れとのにらみあいは、もう終幕になったわけではなかったのである。
奇襲的に催涙液をはだかの上からまかれた海底超人たちは、奇妙な悲鳴をあげて、どぼんどぼんとまっくらな海におちていく。あとからあとへと、このあわれな敗走者の姿が、メリー号のてすりをのりこえて、むこうに墜落していくのが、光弾の照明下に見られた。
「痛い。どうかしてくれ」
「殺してくれ。その方がましだ」
などと、苦しみにあえぐ海底超人たちは、催涙液をのろいつづけていた。
いまはクイーン・メリー号の実際の指揮者である事務長クーパーは、まどのすきまから、甲板上に展開してゆくこの悽愴な光景に魅せられたように、じっと見つめていた。いまやメリー号上の全員は、まくらを高くしてねむられるのだ。
このときマルラ秘書が、クーパーの肩をたたいた。
「事務長、ラスキン大尉からの無線電話です」
「なに、ラスキン大尉から」
クーパーは夢からさめた人のように、ふかいためいきをついて、まどからはなれた。
電話に出てみると、たしかにラスキン大尉の声だ。
「やあ、クーパーさん。怪潜水艇――『鉄水母』とかいいましたね。あれをとうとう捕獲しましたよ」
「えっ、鉄水母をつかまえましたか。こいつはたいへんなおてがらです。しかし、よくつかまりましたね」
「わたしは、わが派遣潜水艦に連絡して、捕獲してもらったのです。ところがこの『鉄水母』ですが、捕獲したものの、このような場所でもあり、場合でもあり、このまま、番をしていることができないから、わが艦隊の手で『鉄水母』を爆沈したいというのです。これについて、なにか意見がありますか」
ラスキン大尉は、鉄水母爆沈をいちおうクーパー事務長に問いあわせをしたのだ。クーパーはそれを聞くと、まずなによりも第一に、鉄水母にのっているはずの恩人長良川博士一行のことをおもい、次に、生けどって手がらにしたいとおもっているロロー殿下のことを考えた。
「大尉、そりゃいけませんよ。あの鉄水母には、わたしたちがこうして海上に出られるように努力してくれた長良川博士が乗っているんです。博士をまず助けてください。それから海底超人国の王子ロロー殿下というのも乗っていますから、あれを生けどっておけば、これからのち海底大陸からおびやかされずにすむとおもいますよ。とにかく乗員を助けた上でないと、撃沈してもらってはこまります」
「ほう、――」
と、ラスキン大尉は機上で目をまるくしているようであった。