60話 ロンドンわきあがる
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「クイーン・メリー号発見さる!」
この一大快報は、はるかロンドンに達した。それはもう真夜中であったけれど、BBC管下の各放送局はあわただしく送信機を起動して、この夢のようなメリー号の再出現を、全国にむけ臨時ニュースとして放送した。
サイレンが鳴りだした。
花火が、まっくらな夜空に、ぽんぽんと裂け鳴った。
号外売りの少年が、大声で街路をどなっていく。
「たいへんだッ。ええ、クイーン・メリー号の消息がわかったという大号外! いま出ました大号外!」
日ごろ冷静なロンドン市民も、この大ニュースを聞いて、たれも彼もみな昂奮してしまった。どの家のまどもぽんぽんとひらく。往来へかけだす者がある。なんのためか、自動車を引っぱりだして出かける者がある。まるで夜中の大地震のようなさわぎだ。
「クイーン・メリー号が見つかったって?」
市民たちは、メリー号の発見について、もっとくわしいニュースを知りたがった。また、その後のようすを一刻も早く知りたがって、放送局や新聞社には、電話や群衆がおしかけて、どうにも整理しきれなかった。
やがて、待ちにまたれた第二報が発表された。
「クイーン・メリー号は、ラスキン大尉の指揮下にある空軍の手によってすくいだされ、目下海上をロンドンにむけ帰航中である。船客と乗組員はすこぶる元気である。ただし今回の遭難事件によって死傷したる者もあるようであるが、まだ詳報は発表されない」
市民たちは、この第二報を耳にして、さしあたり満足の歓声をあげた。
しかし、しばらくすると、またもっとはげしく次の詳報を早く知りたがった。
「クイーン・メリー号が無事にかえってくるなんて、まるで死人が棺の中に生きかえったようなものだね」
「そうだ、それよりも、もっともっと神秘な奇蹟だ。メリー号がロンドンにかえってくると、これはまた見物人で、たいへんなさわぎがはじまるよ」
「うん、わしのような老人は、ニュース映画と放送とでがまんしなければならないだろうが、これで、もう五年も若ければ、人をおしのけても埠頭へいって見るんだがなあ」
ロンドン市民は、寝もやらず、ついに暁を舗道の上でむかえた者もすくなくなかった。
むりもない。世界にほこる大西洋の女王クイーン・メリー号が、奇蹟的に生還したというのであるから、これくらいのさわぎはあたり前であろう。
クイーン・メリー号は、いま、どのへんの海上を航行しているであろうか。
そのようにあっけなく、海底超人族の手からはなれられたのであろうか。
催涙液が、ついに海底超人族を完全に圧倒してしまったのであろうか。
海上は広くて暗い。安心するには、まだ早いようだ。