68話 宿泊所
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クイーン・メリー号の事務長クーパーがたてたロロー殿下の安全上陸計画は、思いのほかうまくいった。
ロロー殿下に仮装したマルラ秘書が、群衆の注意をうばっている間に、本物のロロー殿下は長良川博士とふたりでメリー号の上につんでいた水上機に乗り、カタパルトでとびだした。そして筋書きどおりテームズ河口に着水したのち、そこに待ちうけていたケンブリッジ大学の生物学会会長シムトン博士をはじめ、学界の人々にむかえられ、無事に大学の奥深く連れ去られたのであった。
「やあ、珍客ロロー殿下とやら。この地下室を殿下の居間ときめましょう。ここなら、もう暴民におそわれることもありませんから、どうか安心なさい」
と、シムトン博士は、まがった鼻と白いひげとをいっしょにつるりとなでながら、ロロー殿下にいった。そういいながらも、博士は肥満した腰のあたりを、みょうにふりながら、ロロー殿下の一挙一動を、じろりじろりと興ふかげににらむのであった。
「御親切、どうもありがとう」
ロロー殿下は、かんたんにこたえた。ともすれば、むらむらと反抗心がおこる。それをみずからおさえるのに、どんなにか苦労しなければならなかった。
「おお、長良川博士」
と、シムトン博士は、ロロー殿下のそばに衛兵のように立っている長良川博士をよんで、
「あなたや、あとからこの地へ到着することになっているドン助教授や、三千夫少年には、大学の附近にいいホテルがありましたので、そこをあけておきましたから、おとまりください」
といった。
長良川博士は、それを聞くと、
「いや、わしはロロー殿下といっしょに起きふしします。殿下が大学の地下室にとまられるのなれば、わしもいっしょにそこにとまります。ホテルの方は辞退します」
「そういわないでもいいでしょう。あなた方は人間なのだから、あんな、えたいのしれない動物といっしょに起きふしすることはないではありませんか」
シムトン会長の親切ではあったが、思うところがあって長良川博士は辞退した。