9話 怪物を追う
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二機の偵察機は、変妙な怪物を追うため、ぐっと下げかじをとり、波間とスレスレの低空飛行にうつった。
「へんなかっこうをしているが、しかしどうも潜水艦くさい!」
と、司令のラスキン大尉が双眼鏡を目におしあてたままさけんだ。
偵察機は、一たび怪物の頭上をとびこえると、またグルリと旋回して、ふたたび波間の怪物めがけて強襲していった。
「おい、ハーン信号兵。停船命令をかかげろ!」
ラスキン大尉の命令で、偵察機の尾部からは落下傘仕掛けの信号旗がおとされた。「タダチニ停船セヨ」との信号だった。そうして、機は怪物の上をすれすれに飛んだ。
だが怪物は、その停船信号をきかなかった。きかなかったばかりではない。重そうな鋼鉄ばりの頭をグラグラとゆすぶると、しだいに波間にからだを沈めていくようすだ。
このようすを見るより、ラスキン大尉はじめ偵察機の乗組員はむかむかとしてきた。英国海軍の厳然たる命令をあざ笑うにひとしい怪物のずうずうしい態度だ。
なにしろ洋上は荒れているので、晴れたおだやかな日のように、上から海中の姿を見すかすことができなかったから、せっかく発見した洋上の怪物に、ここでずぶずぶと海面下にかくれられてはおしまいだった。
司令ラスキン大尉は気をもんだ。こうなれば、最後の手段だ!
「戦闘用意! 射ち方始め! 射撃目標は潜水艦!」
僚機にも信号が送られた。ラスキン大尉は双眼鏡をすばやくしまって、機関銃座にしがみついた。
「射て!」
で、射程にはいった怪物にむけて、猛烈な機関砲の射撃がはじまった。
口径二十三ミリの砲弾はドドドッとものすごいひびきをたてて、怪物の上に雨あられと降った。たちまち怪物はこなみじんとなるかと思いのほか、意外にも砲弾はカンカーンとはねかえされた。
「ウヌ!」
ラスキン大尉が歯がみをして、なおも引き金をひきつづけた。だが怪物はびくともしない。
そのうちに怪物は、ユラリユラリと気味のわるい灰色の体を波間にかくしてしまった。そしてあとには白いあわがブツブツゆらいでいるばかりだった。
偵察機は、とうとう怪物をとりにがしてしまったのだ。