8話 洋上の怪物
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「うん、気がついたらしい」
と、一同は大よろこびだった。
「さあ、それでは下へつれていって、すこしいたわってやれ。元気がかいふくしたうえでないと、なにを聞いてもいけないぞ」
と、エバン船長は、厳然たるなかに、深いおもいやりのある言葉をかけた。
スミス警部は、船長の方をチラリと見て、こまったなァという顔つきをした。警部としては一秒たりともはやく少年の告白を聞いて、メリー号の安否をただしたいのであった。しかしかれの希望は、すっかりじゃまされてしまった。その上、ルゾン号づきの医師が甲板に出てきて、三千夫少年を診察したあげく、少年が、夏の海とはいえ、かなり体をひやして、心臓がたいへん弱っているから、すくなくとも一時間は十分に手あてをくわえて経過を見ていなければ、取りかえしのつかないことになると警告したから、なおさらどうしようもなかった。
スミス警部はしかたなく、その一時間を待つことになった。
そのかわり、かれはただちに、メリー号の失踪現場附近でボーイ三千夫少年をルゾン号が救助したことを無線電信でもって、本国ならびに捜査隊に急報した。このスミス警部の報道は、全英国に大きな感動をあたえた。ボーイがひとりみつかった。それなら、やがて本船もその附近で発見されるにちがいない。
ところがなかなかそうはいかなかった。海上は朝をむかえて、ふたたび飛行機の偵察がはじまったが、どこにもいぜんとしてメリー号の船影を見つけることができないという入電ばかりが、むなしくつくえの上につみかさねられていった。
海上の天候は、このとききゅうにかわった。低気圧の中心が、足ばやにこっちの方におしだしてきたものと見える。風がひゅうひゅうと鳴りだし、海はしだいに白く波頭をたてて荒れはじめた。三千夫少年には、不幸中の幸いだった。もう一刻、すくわれるのがおそかったら、かれの生命はどうなっていたか、それはわかったものではない。
英国軍港から特派された航空母艦からは、いまや刻々、気象報告が、捜査にしたがっている偵察機にむけて発せられていた。偵察機は、やむをえず、雲ひくい海上を、低空飛行によって進路を見失わぬようにつとめていた。
そのときであった。偵察機ES一〇一号は荒れ模様の海面に、奇妙な形をした鋼鉄浮標とも潜水艦ともつかぬものが浮いているのに気がついて、急いで僚機にあいずを送った。
大西洋上の波浪にあらわれている鋼鉄製の怪物は、一体何ものであろう。